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マッチョトイプードルと婚活小動物

土曜日の20時更新です……

 春がきた。


 ここは六階? なのかな。街を見下ろしていると何だかテンションアゲアゲで。思わずプッシュアップしたくなるよ。


 ウサくんとモモンガのヨースケくんが就労しているパン屋さん『ほっぺた』の入ってるビルの屋上。


 お昼前、仕事終わりのウサくん達に呼び出された。

 

「聞いてる? ロッキー。腕立てしてないでさ」


 してたね、プッシュアップ。何だか退屈な話だったから。ヨースケくんが失恋したとかしないとか。


「京子ちゃんに……フラれたアアアアアアアアアッ」


 失恋、してたね。確かムササビの彼女だったかな。

 

「でさ、ロッキー。ヨースケはもう恋愛はしんどいからヤなんだって」

 

 ウサくん。


 それ私のプッシュアップを止めさせてまで聞かないといけない話なのかな。最悪呼び出されたまではいいよ。友達なんだ。一緒に居てあげる。でもね、プッシュアップ止めさせる必要が

 

「結婚したいんだって。手っ取り早く」


 黒耳ひこひこさせながらウサくん。

 

 ちょっぴり面白い。


 スゴい振り幅じゃないか。車に跳ねられて一回転したら立っちゃった、みたいな。うん、違うか。

 

「俺さ……マッチングアプリやろーと思ってんだロッキー!」

 

 そか。スマホとかで結婚相手探すアレだね。何で私に宣言するのかな?

 

「スマホ貸してやってよロッキー」

 

 それはイヤだなー君達。だって私のスマホで登録したら私のトコにびゃんびゃん通知来るよね。

 

「小動物界隈でスマホ持ってんのロッキーだけなんだもん。お願い! ヨースケの婚活の為だからッ」

 

 確かに犬カフェの売れっ子で動画投稿でも稼いでる私だからこそのスマホ所有なんだが……ウサくんやヨースケくんにも動画出てもらってるしなぁ~。

 

「俺には…………夢がありますッ!」


 ハイィ?


「それは結婚して奥さんとじじばばになっても手ぇ繋いで滑空するコトです!」

 

 ちっちゃいおててを握りしめてヨースケくん。そんなキラキラした目で……

 

「僕にも夢があります!」


 え、こっちも?


「それは結婚したヨースケとお嫁さんに両手繋いでもらって、ここからアイキャンフライするコトです!」

 

 面白ーい。

 

 ウサくんのソレ、是非見てみたい。私は躊躇するコトなくスマホを提供したね。

 

 キャッキャッ言いながらアプリをダウンロードする彼ら。登録はメアドでしてもらった。勿論、無料会員。機能に制限あるみたいだけど充分に使えそうだ。


 ウサくんが写真撮ってあげてる。


 自撮りは嫌われるんだって。目線を外した自然な表情を要求してる。ちゃんと研究してきたんだね。ビラビラ(皮膜)を広げて見せるヨースケくん。飛んでない時キモいんだがアレ。


 アンケート形式でプロフィールを入力していく。


「俺、年収一万円以上ある!」とか「小動物に学歴関係ねーし!」とかヨースケくんの威勢がいい。


 良かったよ。元気出て。

 

 いよいよ嫁さん探しのスタートだ。検索するとお相手の顔写真がズラ~ッて出て来る。

 

「顔出しNGのヤツ、イミフ!」「コレ、ヤマネじゃーん!」「ババァがいる!」


 テンション高いけど大丈夫かな。


「あッ……」


 ん? 


 急にヨースケくんがモジモジし出したぞ。これはアレだ。ジャストヒッツの予感。


「いいねしろよヨースケ」


「え~ッ……ムリだようウサ」


 お互いにいいねがついたらマッチング完了らしい。今までの勢いはどこ行ったモモンガ。


「えい」


 ウサくんがいいねポチった。


「ウサ! てめーッ……」


 ピロリン。


 相手からもいいねの通知が届いたみたいだ。いきなりのマッチング成立。


 そして場の空気が一気に変わる。


「ヨースケ! メッセ送れ。早く早く早く!」


 どうやらここからはスピード勝負のようだ。


「え、ちょちょちょちょ! 待って待ってウサ。俺、上手くキーが打てないんだよう……」


「すぐにお返事しないと逃げられるってヨースケ! 何でもいーから打てよ、このバカ! どチビ!」


 思わず泣き出すヨースケくん。選手の心を折っちゃ良いセコンドとは言えないなウサくん。


 私は彼らから素早くスマホを取り上げると大きく頷いた。


「ひぐッ、打ってくれんのロッキー? えと、えと……こんちわ。俺ヨースケって言います。素敵な皮膜ですね。と、とりあえずそんだけ」


 両前足を使ってフリック入力。前腕の筋肉が盛り上がる。よし、送信!


 するとメッセージ画面が現れた。


『メッセージをやり取りするには飼い主の方の写真付き身分証明書を送信して下さい』


 すん……………………て静寂に包まれる屋上。


 みんな何となく空を見上げていたね。ぼんやりと霞んだおぼろ雲が一面に広がってる。

 

「……素敵な皮膜て」


 誰かが呟いた。

それではまた……

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