炎の七番勝負~ザ・サード~
土曜日の20時更新です……
菓子パン三個。
今回はそれで手を打ったね。
パンダは基本戦わない。それはそう。だって動物界のキングだもの。王は玉座に座してれぱいい。
それでもパン田はこの戦場に立った。
友人の、イヤ下々の頼みとあればいつだって剣を抜くさ。
菓子パン三個ももらえるし。ここのところ水しか飲んでないからね、うん。とっとと敵ぶっ倒してメロンパン頂きたいと思ってるよ。
「この公園の仲間達からアンタの噂は聞いてるゼ。パンダのダンナ」
「ほほう。さぞかしポッポポッポ言われたんだろうね。ハトの……ハトくん」
少し胸の分厚いハトが首をカクカクやってる。目付きの悪いヤツだ。
「アンタ、ハトに成りきって餌場を食い荒らすそうじゃねーか。パンダのクセによ」
「それは心外だなー。いいかい? パン田の餌場なんだよココは。ポップコーンを投げるおじいさんがいたとすれぱ、それはパンダになんだ」
「クルックック。公園のベンチでジジイがポップコーン投げたらそれはウチらにだ。世界共通ルールだゼ」
ここに間違った価値観のハトがいる。
パンダはその責に於いてコレを正さねばならない。
一刻も早くメロンパンを手に入れる為に。あとドーナツパンとランチパックも。今日はアイドルとしてのでんぐり返しは封印するとしよう。
「いいだろうハトくん。どちらが正しいか勝負しようじゃないか。ポップコーンの拾い食いで!」
「イヤ、素手ゴロでやろうクルック」
す、すで、スデゴロ? 新発売のパンか何か?
「行くゼ、ダンナッ」
いきなりハトが羽で叩いてきた。パシッて。後ろ足の膝の辺り。ちょっと痛い。
「クルッポ、このデカブツ! ガリガリのクセにッ」
今度はジャンプしてお腹叩いてくる。
ひょっとしてだが。この鳥はパンダと殴り合うつもりなのかな?
おいおいおい冗談じゃない。パン田はお腹が空い
パシンッ!
「あ痛。目……」
羽が目に入って思わずしゃがみ込む。
そこをパシパシはたいてくるんだ。最初はスゴい元気に羽パタパタしてたのに、何かだんだん大人しくなってきて……あ、止まった。
「ハアハア……そ、そっちの希望通り。ポップコーンの拾い食いで勝負してやるゼ!」
「ああ、ご飯食べれるんなら喜んで受けるとも!」
ポップコーンのコト「ご飯」て言ってしまった。
もう、お腹と背中がくっつきそうなんだよ。菓子パンなんて待ってらんない。
さっさとパーティーを始めようじゃないか! この焼き鳥…………イヤ、違う違う。えーと。うん、わかってるって。この……フライドチキン? 違違、何だっけコイツ。
気がつくと。
パン田はこの鶏肉の羽根を一本一本ひっこ抜いてました。
「ハッ、これは失礼」
「ほっ……ほっ……捕食されるううううううッ!」
チキンが泣きながら逃げて行った。
周りがドン引きしてる?
だけどパン田は気にしない。何故なら王にも戯れが必要だからね。イッツ・キングジョーク。
ウサくんがホラ、喜んでくれてるよ。
「ナイス食欲! 腹ぺこパンダ!」
パン田はでんぐり返しを決めてみせる。あっちの神様も手を叩いて大喜びさ!
歓声が聞こえて来るんだ。
パンダを褒め称える声、声、声。
パンダ座りでそれに応えよう。それでも称賛は鳴り止まず。
自然と両の前足は天に向かって突き上がってゆく。
ワールド・イズ・マイン!
それではまた……




