炎の七番勝負~ザ・ファースト~
土曜日の20時更新です……
『三月はライオンのように訪れ、子羊のように去っていく』
何年か前にやってたアニメのタイトル、ググったら出てきた言葉。イギリス? の諺か何かで〝三月は天気が荒れる〟みたいな意味だったと思う。
今日はムッチャいい天気。
私は公園のベンチに座って緑のジャージの前を全開にしてみる。思わず背伸び。ん~、気持ちいい!
白Tに少しブラが透けてるけど気にしない。真っ昼間でも今日この公園には誰も来ないから。神様が結界ってヤツ張ってんだって。
隣にはウサとトイプーのロッキーが鎮座してる。
「ウサ……あの、ホラ。向かい側のベンチに座ってるちっちゃい女の子。あれが神様だよね?」
「そだよリン」
「……気のせいかな。あの子、何か私と同じ位のボブで私と同じ緑ジャージ上下なんだけど」
「そだねリン」
「ウサくんがコーディネートしたんだよ。リンさん」
脳筋ロッキーが答えてくれた。
何をしとんだウチの子は。山の神様が私のミニチュアみたいになってんだけど。いいのか神的にこれ?
炎の七番勝負だっけ。今日が決戦の日みたい。
伊吹山にいた頃にウサが神様とノリだけで決めちゃった全面戦争。神様率いる神使軍VSウサとお友達軍が対決すんの。この公園で。
ウサが勝ったら何でも言う事聞くらしいけど神様。もしこっちが負けたら街滅ぼすって。
イカれた企画だよね~。
ん? 何かイカれ神が叫んどるわ。
「兎~ッ、そろそろ始めるのじゃああああ」
「オッケェェェ! そっち誰出すの~?」
「そっちはどいつじゃ~」
「ハムスター!」
「心得た~」
神様蛇さん出してきた。しかも大蛇。
イヤ、完全後出しじゃん! コスくね? 神様。
「いってこーい。とっとこ」
「はいい、ウシャしぇんぱい!」
あ、ハムスターちゃん出てき……イヤイヤ女の子じゃんか! 覆面みたいなの被ってるけど。相手デカッ、二メートル位あるよ。茶色と黒のまだら模様がグロいわー。シュウウウとか言ってるし。
これ……ヤバくないか?
「資料によれば、あゆみちゃんは覆面女子プロレスラー目指してるそうだね。ウサくん」
「僕のお友達の中じゃナンバー1ストライカーです」
解説付きだここの席。
「得意技とかあるのかな?」
「とっとこは金蹴りの名手です」
ないよね金玉。多分だけど。
蛇さんの丸飲みショーになるかもだわ。体巻きつけてバキバキッてやってサ。
逃げた方がいいよーッ、ハムちゃん!
あ、あ、トコトコ行っちゃダメ。蛇さん舌しゅるしゅるって……ウソ、首に抱きついたよあの子。
「組んだねウサくん」
「触れたらこっちのモンです」
アレって…………絞めてんのかな? 何か前足でぎゅうううてやってるよハムちゃん。蛇さんバタバタして苦しそ。
ん? 動かなくなった。
「落ちた」
「落ちた落ちた落ちた」
物騒な言葉を連呼する解説陣。
ハムちゃんトコトコ帰ってキタ。蛇さん動かない。
「ウシャしぇんぱい。やっつけてきましゅた!」
「乙。とっとこー」
ハグするウサ。覆面越しだけど何か嬉しそーなハムちゃん。
「資料によれば、あゆみちゃんは金蹴りとか首絞めとか反則技が得意なんだリンさん」
「へ? あ、うん。へぇ……」
筋肉トイプーの解説も入ってこんよ。だって神様がムッチャ睨んできてんだもん。
私の事を!
何で? 無関係なんスけど私。ひょっとして「同じカッコのヤツがいる」とか女子的なアレですか? イヤ、こっちがオリジナルだから。ウサのせいだからねそれ。
神様の視線をこう……誘導するよーに。
ウチの子に視線を送る私。
「やったるでウサ。ワシ、やったるでウオオオオオオオオッ!」
やる気満々のキツネの肩揉んでた。
何だか、嵐の予感。
それではまた……




