ビューティフルライフ~キツネの三助の決断~
土曜日の20時更新です……
今日はええ天気。
ワシは公園の植え込みの中で温かい甘酒をいただいてる。さっきお稲荷さんの信者から差し入れでもろたヤツね。
優しい甘みがキツネの舌にアジャストするわー。
一緒に公園で暮らしてる亀のかめ丸も冬眠からもうじき覚めるしな。春になったら花見とか楽しみ。
ヒョロヒョロピヒョ~♪
ヘヘ。義手につけたリコーダー吹いたった。
「ふああああああ……」
ちょい眠なってしもた。快適過ぎて。
何か落ち着くわこの生活。
「やっぱ都会の水がワシには合うてるんやな。お昼はきつねうどんチュルチュルしよ」
「うどんチュルチュル」
ざさッ。驚いて振り返るワシ。
目の前の植え込みから……白うさぎの黒耳がひこひこ突き出しとる。
「パーソナルスペースって言葉知らんかなウサ」
「情緒不安定な音色聞こえてきたから安否確認だよ。でも、これならやれるね三助」
「何を?」
「今度伊吹山の神様と七対七で勝負すんの。三助も出てよ」
アホやコイツー。いつもやけど。
伊吹山の神様ゆーたら大昔にヤマトタケル泣かしたコトある激ヤバ神やで。ガキの頃婆様から何べんも聞かされたわ……つか、それでこないだ来てたん神様?
「来週ここで戦うから。炎の七番勝負ヨロ」
「ちょちょちょちょちょちょ、ちょ、待って。来週? ここで?」
「ヤスッ(イエス)」
「……ワシ?」
「ヤスッ」
「アホか? アホなんかお前?」
「ヤスッ」
「こないだ神様が癇癪起こして、この辺地震になったん覚えてる?」
「三助が土下座したヤツ?」
「お前が怒らしたヤツ! とにかく絶対やれへんからワシ。神様とバトル、ノーサンキュー。オケ?」
「アハハ戦争だから。やんないと街滅ぼされちゃうよ。住むトコ無くなります」
ワシは思わずこの白い悪魔の頬っぺたをつねり上げとった。ぎゅうううて。
「痛い痛い! 勝ったら、勝ったらなんでも言うコト聞くんだって神様があああ」
ピタと手(前足)止めるワシ。
「……頸珠」
「クビタマ? 何それ痛いい」
婆様から聞いた昔話に出てくる。
神様とヤマトタケルの絡みで定番のヤツ。伊吹山のキツネなら知らんモンがおらんそれを。
ワシは思い出してたんや。
倭建命、山の神に頸珠ひと欠片奪われき。其れには霊力が宿りて、狐が待てば大妖狐にもなるといふ。
リコーダーの付いた右前足をじっと見てみる。
「……婆様」
「え、ババア? ババコンなの三助?」
ウサの頬っぺたをチキチキつねりながら。自分の中で何かがピョコンて頭もたげんのがわかった。
「…………やるでウサ。ワシ、やったる!」
「え、ホント? じゃ頬っぺつねんの止めて」
「ひとつお願いがあんねんけど」
「痛痛い」
「勝ったら神様何でも言うコト聞いてくれんねやろ。罰ゲーム? ワシに決めさして」
「ええええええええええええええ~ッ! 僕、デコピン考えてたのにィ…………オッケわかったギブギブ」
これでええ。
神様にデコピン決める気の小動物よかワシの方が千兆倍まともやん。
頬っぺた解放してやるとワシの頭小突いて「三助のバ~カ、ババコ~ン」とか叫びながら逃げてくウサ。
ああ……。
何かひっさびさに滾ってキターッ!
義手をリコーダーからウォーハンマーにチェンジして遠吠えカマしてみる。
「ワオーンオンッ、おふぅ」
ちょっとハズいから短くやったった。
神様負かして
頸珠手に入れて
山に帰ろ。
ほんで日本中のキツネ束ねて雌キツネはべらかして、ハーレム作るんや!
キツネ王国のキングになったるでワシ。
きつねうどん食べ放題のな。
それではまた……




