お正月に地元の神様、現る
土曜日の20時更新です……
年明けたー。
僕は近所の公園ベンチに座ってコンビニのコロッケ食べてる。カリカリ。
お正月だから人居ない。
何だか寒いらしいけど。僕、元々野うさぎだったんで雪山でも平気。今日は陽も差してて気持ちいいからね、脱糞しながら走り回ろーかと思う。
ん……?
目の前にちっちゃい女の子立ってる。
髪、長ッ。足首くらいまであるじゃん。小学生? 何か地味な着物着てんなー。切れ長のお目めが印象的。
「久しぶりじゃのう兎」
「誰ー?」
女の子が睨んで来た。怒ったみたい。この感じ、どっかで……。
「アレだ。ほら、アレアレ。ヒント下さい」
「伊吹山」
僕の地元。地元の連れ?
…………あ、思い出したッ。
「給食作ってる人!」
「神様じゃ」
アララ。
地元の神様キタ。
「前に山の麓の神社まで遊び行った時。会ったよーな気がする……」
「うん。お前ワシの事忘れとったのか?」
「忘れてたー」
あ? て顔の神様。
ウソ。覚えてるよ。あの時色々あって逃げるように山を出たんだ僕。
「ワシも片付けが残っておったからな。ようやっと出て来れたんじゃ」
ガサガサッ。
ベンチ右手の植え込みからキツネの三助が這い出して来た。耳がピコんてなってる。今日の義手はミニ鏡餅。
「あけおめウサー。ん、何やそのガキんちょ? ウケるんやけど。呪いの日本人形コスか?」
「伊吹山の神様だよ」
ペタアアアアアアアッて地べたに張り付く三助。
「お前のばあ様は知っておるぞ狐。コスって何じゃ」
「へ? あ、そーッスね……今風のアレなんで、神様知らんくて平気ッスよ!」
「呪いの日本人形はわかる」
薄くなってひれ伏すキツネ。お前は紙か。
「亀はどうした」
「かめ丸は冬眠中ね。それより神様。僕コロッケ食べたからもう帰るけど」
「相も変わらずつれないのう兎。まぁ、今日のところは顔見世じゃ。ワシも赤坂のホテルに帰る」
「……そのカッコで東京うろついてんの?」
三助が顔をチラって上げて「それ言うたらアカーン」とか小声で言ってくる。
「何じゃ兎。文句あるのか」
「それじゃポリ公に止められる絶対。髪型と着るモン何とかした方がいいって」
最初頬っぺたプウウってしてたけど。少しソワソワし出す神様。
「どうすれば良いのじゃ」
「とりあえず散髪行ってサ。そのあと◯◯屋で子供服買えばいいじゃん。僕も◯◯屋たまに行ってる」
「案内せい兎」
「えええええええええええ面倒くさい面倒くさい面倒くさいいいいいいッ!」
ゴロゴロ転がってアピる。僕の得意技炸裂。
「ワシはかつてヤマトタケルをも退けた荒神なんじゃがなー!」
「キックボクシングの?」
「なんじゃがなーッ!」
神様が癇癪起こして地団駄踏み出した。足ダンだ! 僕も起き上がると足ダン始める。
足ダンで負けるワケにいかない!
ダン、ダン、ダン、ダン、ダン、ダン、ダン、ダン、ダン、ダン、ダン、ダン、ダン、ダン、ダン、ダン、ダン、ダン、ダン、ダン、ダン、ダン、ダン、ダン、ダン、ダン、ダン、ダン、ダン、ダン、ダン、ダン、ダン、ダン、ダン、ダン…………
「じっ、地震……地震起きとるがな神様アアアアア」
三助が頭抱えて叫んでた。
辺り一面グラングラン。マジかー、このチビ神め。
「クッ……僕の負けだよ神様」
「うん。したら案内せい兎。愛嬌の良い感じにしてくれ」
わかった。よくわかんないけど。
✳✳✳
とりあえずリンみたくボブにして緑のジャージ着せといた。
「……赤坂やで」
キツネがぼそって言う。リンはこのカッコでどこでも行けますけど何か?
「頭軽いの~軽いの~」
神様も気に入ったみたい。クリクリ回ってる。
そのまんまご機嫌でホテルに帰ってった。
「ウサ……神様何しに来はったんや?」
「観光じゃね」
ウソ。ホントは観光じゃないんだ。お正月からウソばっかついてる僕。
今年は荒れるな、きっと。
それではまた……




