表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

80/229

今年の大晦日はシケてるとウサが言ってました

土曜日の20時更新です……

「リン、大変! 大変! 大変だ!」


 大晦日。特にやる事もなくマンションの部屋で転がってたんだけど。お気にのピンクのモコモコ部屋着。


 夕方になってウサが突然騒ぎ出した。


「……どしたのウサ? 年越しそばはカップ麺で話ついてた筈だけど」


「違う、それはもう諦めた。じゃなくって」


 アワアワしてる。黒耳とお鼻がひこひこ。


「アレがやってないんだ! 裸ん坊のふんどしオジサンが太鼓叩いてるヤツ」


「それオープニングでしょ。総合格闘技だっけ? やってるよ地上波じゃないけど」


 今年はネット配信だって。ウサが私のスマホでそっち系の動画観たりSNSやってるから。イヤでも情報入ってくんのよ。


「観れないの?」


「観れない」


 叫びながらゴロゴロするちっちゃい子。


 チケット買ったら配信見れるけど言わない。大晦日は何もしないのがマイルール。晩ごはんはレトルトのカレーって決まってるし初詣にも行かない。


 疲れちゃったのかしょんぼりしながらテレビをつけるウサ。某国営放送の歌合戦やってた。


 N◯Kってホントに映るんだね。都市伝説かと思ってたわ。


「アレ……?」


 突如、立ち上がってフリーズするウサ。


「アレアレアレアレアレアレアレアレーッ?」


「今度は何」


「アイちゃんが出てないッ」


 ウサの大好きなパンクアイドルグループね。来年東京ドームで解散する。


「落選したから出ない」


「イヤだー」とか「ウソだー」とか「N◯Kぶっコロー」とか両前足グーで叫んどる。カワイイ拳。


「今年の大晦日……地獄!」


 去年は格闘技に夢中になっててアイちゃんの初歌合戦見逃しちゃってさ。「生き地獄!」って足ダンしてたけど。


 今年はとうとう〝二兎追ううさぎは一兎も得ず〟ですか。


 ハグしとこっかウサ? あ、イヤイヤされた。


 その時、


「ピンポ、ピンポ、ピンポ、ピンポ、ピンポ」


 年の瀬にインターフォンの連打キタ。


 この鳴らし方、知ってる。背の届かない小動物が一生懸命ジャンプして押してんだよね。私はドアを開けてみた……ガチャ。


「ウーサーくーん。あーそーぼー」


 マッチョトイプーのロッキーだ。腰に前足当ててビールのロング缶ゴクゴクしてる。


 無言でドアを閉める私。


 無言でドアを掴むトイプー。クソびくともしねー! 私、両手で引っ張ってんですけどー!


「あ、ロッキーだウヘヘヘ」


 地獄から生還してきたウサがゲラゲラ楽しそう。見せモンじゃないからな筋肉犬VS人類。


「ウサくんコレ。さっきまでドッグカフェの打ち上げがあってね。いただいてきたよ!」


 床に置いたビニール袋からハイボール缶を取り出すロッキー。


「やったー! いいよねリン? 僕、酒でヤなコト全部忘れちゃいたいんだ」


 はあ、別にいいスけど……。


 大晦日は心臓以外動かさない予定だったのに。ま、仕方ないか。


 私は渋々ドアをオープンした。ロッキーが缶々ガラガラいわせながら入って来る。うぉ、酒くさっ!


 二匹は小テーブルにキチンと座ると缶プシュプシュッて。ムキムキはビールごくごく。ウサはハイボールちびちび。「うっす」とか言ってる。


 何となく面白そーだったんで……私もポテチ抱えて参戦した。


 三十分後。


「アイちゃんの解散を阻止します……ドームを消し去ってしまいなさい!」


 酔うとフリーザになるウサ。


「リンさん、だし巻き卵とネギの天婦羅お願いします」


 居酒屋じゃねーわ。やたら私にフッてくる犬。


「ここでオシッコするから見てて!」


 下戸の私は、飲むと顔真っ赤っかになって自己主張を始める。


「おやおや……格闘技の試合、動画がアップされてますねぇ」


「リンさん、冷奴一丁!」


「歯磨いて寝るからぁ、オシッコするとこ見てて!」


 今年の大晦日。


 楽しかった。

それではまた……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ