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夏の思い出チルチル

土曜日の20時更新です…

 九月って思ってたより涼しい。

 

 地獄のような暑さ続きでエアコンの前から離れなかったウサが「ピクニックしたい」って言うからね。駅前の平和公園に来てる。

 

 木陰にシート敷いてバスケットでランチタイム中。ウサが全力で訴えてくる。

 

「リン、このサンドイッチとチキン美味しい! こんなの食べたコトないよ。コレ作った人、天才!」

 

 前回のピクニックで冷凍食品のコロッケ、たこ焼き、チャーハンのラインナップだったからかな。コンビニのチキンとサンドで大はしゃぎのウサ。

 

 シートの上ゴロゴロ転がったり、その辺走り回ったりしては「ピクニックぽい!」とか叫んでる。

 

 私も緑ジャージにキャップ被ってリラックス出来てるわ。風があって気持ちいー。

 

「ん?」

 

 シートの端に。

 

 麦わら帽子の女の子が正座してた。

 

 ツインテメガネで白ワンピ。牛乳の小パック片手に菓子パンもぐもぐ食べてんだけど……。

 

「誰?」

 

「……瀬良じゅりあかしら(もぐもぐ)」

 

「はぁ、えと…………どちら様?」

 

「(ゴクン)リンはおバカなのかしら。瀬良じゅりあ。小三よ。今日は日曜なんで昼間っから推しのストーキングに精を出してるのだわ」

 

 私の名前、知ってる。ウサを見た。ラムネごくごく飲んでますけど。

 

「ウサ、知り合い?」

 

「瀬良は僕のお友達だよ」

 

 真っ赤になってる彼女。何これ。アオハル?

 

 白うさぎは、そのまま何事もなかったかのように噴水へ水遊びしに行った。私達を残して。

 

「…………」

 

 小三相手に絶賛人見知り発動中の私。

 

 彼女はバスケット見ながら菓子パンもぐもぐしてる。とりあえずお姉さんぽい事言ってみるか。

 

「あ、あの……よかったら召し上が」

 

「せら調べによれば」

 

「へ?」

 

「リンはピクニックの時でもオール冷凍食品でキメる冷食ジャンキーなのだわ。なのにコンビニのサンドイッチ&チキン」

 

「ジャ、ジャンキー?」

 

「……残念だわね。ひよっちゃったのかしら」

 

「はああああああ? べ、別にひよってねーし!」

 

 冷静な眼差しを向けてくる麦わらの小学生。

 

「こんなのはSNSでチルチル言ってる脳ミソチルチル女のやる事かしらね。せらをガッカリさせないでリン」

 

 ムッチャ怒られてるー。初対面の小三女子にガッカリされてるー。

 

 スン……………………て。お互い沈黙。

 

「……」

 

「……」

 

「…………その麦わら素敵」

 

 かーッて顔が赤くなる彼女。

 

「交換してよ。私のキャップと」

 

「え? ……べ、別にいいのだわ」

 

 麦わら帽子を渡してくれる彼女、じゅりちゃんね。替わりにキャップを被せてあげた。お、おキャワ!

 

 私、何かぶぅわッて出た。

 

「瀬良ーッ……」

 

 噴水の方からウサの叫ぶ声。

 

「ロッキー来たよーッ……」

 

「じゅりあーッ……こーんにーちはーッ……」

 

 ウサがびっしょびしょになって走って来る。茶色いびっしょびしょも一緒だ。

 

 顔赤いまんまスックと立ち上がるじゅりちゃん。

 

「ずぶ濡れになると獣臭さが増すのだわ! アナタ達、今日は爆竹しないのかしら」

 

「持って来たんだけれどね。この通り、びしょ濡れサ」

 

「何だようロッキー。セミの死骸集めて爆破したかったのにィ」

 

 平和公園なんですけどー。死骸とか爆破とかNGなんですけどー。

 

 じっ……とじゅりちゃんのキャップと私が持ってる麦わらを見比べてるウサ。いつもはすぐに思った事を口に出すのに、何も言わない。

 

 ウチの子が空気読んでくれてる~!

 

「……とおおおおうううぅぅッ!」

 

 今度はどっかから掛け声。仮面ヒーローのヤツ。

 

 ぴゅうううて、ちっこいのが飛んで来て私の肩にしがみついた。

 

「瀬良じゅりあだ! 瀬良じゅりあだ!」

 

 モモンガのヨースケくん。人の肩の上ではしゃぐはしゃぐ。

 

「ムササビ」

 

「ムササビじゃないですー! モモンガですー!」

 

 嬉しそうなヨースケくん。じゅりちゃんとの絡みに満足した模様。

 

 小動物って遊びの勘がやたら鋭い。


 連絡も特にしてないのに、ピクニックはあっという間に賑やかになった。

 

 この子達、食事の時だけは行儀いいんだよなぁ。


 皆で仲良くバスケットつまん……

 

 え、え?

 

 じゅりちゃんも一緒にサンドイッチ食べて、チルチルしてるーッ!

 

 私、また何かぶぅわッて出た。

 

 テンション上がって手に持ってた麦わら帽子を思わず被ってみる。

 

 懐かしい少女の香りに死んだ。

それではまた……

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