イジられキツネの境地
土曜日の20時更新です…
……ドキドキ。するんやけどー。
ファミレス。初めて来た。
山育ちやし。そもそもキツネやし。何なら外食デビューやし。で落ち着かん感じ。
「今日は派手に飲み食いしてくれたまえ。こないだの動画、再生回数が伸びてね。ウサくんや三助くんのおかげだよ」
筋肉ゴリラのトイプードル、ロッキーの奢りってコトやね。
何かワシ、テンパって右前足の義手にドリル付けてきてしもた。「普通お箸とかじゃね」て突っ込んでくれよウサ……ん?
「ドリンクバーはいらない。お腹一杯になるから。サラダバーはこの世から消えてなくなれ……」
メニューガン見しながら草食動物が言うたらアカんコト言うてる〜。
コイツ、ファミレス慣れしとんなー。リンに連れてきてもろてるんか。あ、ベル押しよった。なになに?
店員の女の子、来た。
「ご注文をお伺いいたしまーす」
「私はグリルチキンとグリルチキン」
「僕はねー、チーズハンバーグとミックスフライ。あとポテトフライとチョコパフェ!」
「あ、ワシは……えーと、えと」
じっとワシを見てくる二匹。まさか……何かオモロいコト期待してんの?
イヤイヤイヤ出来ひんて、アホかお前ら。もうパニックやわマジで!
「…………きつねうどん……」
どっ!
何かウケとる……。好物言うただけやのに。
せやけど、ちょっと緊張解れたなー。注文も通ったしな。きつねうどん大好き。
「三助ー。何そのドリル?」
「コレな! 回るんやでホラ」
ギュインギュイーン。ゲラゲラ皆で笑う。
伊吹山でウサと繰り広げてた死闘とか、思い出話に花が咲いて。ロッキーも興味津々でワイワイ盛り上がってて、ムッチャ楽しい!
もう、三匹でキャーキャー言いながらテーブル一杯に並んだご飯を囲んだ。
「いっただっきまーす!」
二匹がいきなり、すんっ…………てなる。
お澄まし顔でご飯食べ始めた。
フォークとナイフ、器用に使って。お上品に姿勢良く黙食。ウサなんかポテトつまむ時、小指立てとるがな。
え、え、ファミレスってこんな感じなん?
案の定、じっ……とワシを見てくる二匹。
イヤイヤイヤイヤイヤ。お前らワシに何求めてん? フリ、フリ、オチ、ちゃうからな。
そもそも『キツネの食うきつねうどん』でユルうオチてんの奇跡的に。もうこれ以上ムリ! 堪忍して。元々陰キャやからワシ。あんま追い込まんといて。
何か緊張してきた。心がゾワゾワするう。
……ありの~まま~でぇぇぇ、いいのぉぉぉ~♪
キショい歌が頭ん中回る。何コレ? ここ、どこ?
気付いたらワシ、伊吹山におった。
懐かしい山嶺。小川のせせらぎ。澄んだ空気。
本能のまま、自由に生きて。
食いたいように食ってた。
……好きなうどんんんん、好きなよーに食うたらええんちゃうんんんん…………
山の神様の声が聞こえた(気がした)
「はっ……!」
自分を取り戻したワシ。
お箸持って、いつも通り無心でうどんと向き合う。
「は、はふはふはふはふはふはふはふ」
熱いから。
一本ずつ、ちゅるちゅるちゅる。
どっ!
……またウケた。
「三助か~わ~うぃ~うぃ~!」
「熱いから! 熱いからね三助くん。それでいい!」
「三助がはふはふして、うどん食べるーッ!」
「ドリルに羽つけて回せば冷ませるんじゃないかな!」
ものスゴい沸いとる。
何か……イジられてんな~ワシ。
それでもコイツらと一緒に。平和にやって行きたいかなぁ。
「昔はアホみたいに大口開けて追っかけて来るキャラだったのに三助〜!」
「今じゃうどんちゅるちゅる三助くん!」
うん。
その内イジり返したると誓った。
それではまた……




