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じゅりあ(九才)の新たな冒険

土曜日の20時更新です…

「冷静にぃなってぇなぁにぃにぃなるうううッ♪」


 思わず鼻歌出ちゃったかしら。


 絶叫系ストーカーの瀬良じゅりあ。小三のツインテメガネ女子なのだわ。


 今日は私の推しのうさぎが、筋肉バカのトイプーと遊ぶ日の筈なんだけれど。学校帰りに探してもどこにも居ない。


 だから網を張って待ち伏せする事にしたの。


 二匹の行きつけの駄菓子屋さん。


 店先に十円ゲームが二台あって、店の中は細長いザ・駄菓子屋って感じの。


 今からここに潜伏します。隠れるトコ探さないと。


「うん?」


 店の奥、おっきい箱に『棒きなこ』が一杯入ってる棚の前。ウサの舎弟のメタがいるのだわ。エキゾチックショートヘアの子猫。


 蛙のポシェットからお金を取り出して……何か驚いてるわね。


「コレ、五十円玉だ……!」


 初めて見るのかしら五十円玉。


「銀色ピカピカ」とか「穴が開いてていい感じ」とか叫んでるけど。


「棒きなこ。何十本あんのかわかんないけど……全部買っちゃえ! だってボク、五十円持ってる」


「……子猫が五十円玉握りしめて無双状態かしら」


 声掛けすると驚いて振り返るメタ。


 相変わらず面白い顔なのだわ。でも、せらを見て笑顔で駆け寄って来てくれた。


 お腹の奥がキュン、てなるわね。


「ストーカーの瀬良じゅりあだー。今日はウサ兄ちゃんいないよストーカーの瀬良じゅりあー」


「個人情報ってモン知らないのかしら。承知の助だわ。まさかとは思うけどメタ。その五十円で棒きなこ、箱買いする気?」


「あのね。いつもコレ買う時は猫カフェのマンチカンおばさんが十円玉持たせてくれる。メタは計算出来ねーんだどもなーって。でも今日は五十円玉あったの。だからハコガイします。棒きなこ大好き!」


 真っ直ぐペチャンコな視線がそそるわね。


「メタ。ダンボールの札に一本十円て書いてある」


「うん!」


「五十円だと五本しか買えないのだわ」


「全部買えるよー。だって五十円もある!」


「ムズいわね……。計算よりも五十円の実力を教えるべきかしら。いい事、顔ペチャ。十円玉が五枚集まって五十円玉一枚なの。十円の五倍」


「茶色い十円玉が五枚で銀ピカの五十円玉?」


「イエス」


「……ウソだねー。五十円玉って絶対スゴいもん。十円玉なんか目じゃないよ!」


 五十円玉のポテンシャル。ここまで信じてる子いないわね。おバカで愚かな小動物。ふふ、嫌いじゃないのだわ。


「あら」


 お店のおばあさんトコに行っちゃったかしら。ちっちゃな胸を堂々と張って。


「おばあちゃん。これで棒きなこぜ~んぶ下さい!」


「五十円かい。じゃ五本持ってって」


 ピタと止まった。


「五……本…………?」


 あ、あ……そんな震えて。


 泣いちゃった。


 ……………………た、たまらん。


 この子、たまらんのですけどーッ!


 せらは破水しました。妊娠もしてないけど出産準備に入ります。


「ヒッ……エグッぐふう。せ、せ、瀬良じゅりあ……」


「え、何かしら?」


「ボ、ボ、ボクにッ……」


「……」


「計算……教えで!」


「……」


「……おバカなの…………イヤだがらぁ」


 泣きながら訴えてくる!


 棒きなこ五本大事そうに抱えて……。


 イヤイヤイヤイヤ、ちょっと待って待って!


 せっかく見つけたダイヤの原石。台無しにするおバカこの世にいるかしら? そもそも計算とかより五十円過大評価すんのやめた方がよくない?


 うーん……。


 ま、いっか。


 欲しかった宝石の色。ちょびっと変わるだけなのだわ。


「よくってよメタ。今日からせらがアナタの先生」


「ありがと。瀬良じゅりあ先生!」


 な、何よこのやり取り……泣きながら笑うペチャ顔の子猫って。せらは情緒が行ったり来たりで二回は死んだ。


 その時だわ。


 ズサササアァァアアアッ!


 白目剥いてるせらの前を駆け抜ける一迅の風。


 うさぎとトイプーが店内にフルスロットルで突っ込んで来たのね。


「おばば! いつものちょーだい!」


「ウサくん、まずご挨拶。オバーサンこんにちは!」


 ウサとロッキーはそう言うとおばあさんに百円ずつ突き付けたのだわ。


「毎度ありィ」


 引き出しから爆竹を出してきたおばあさん。ひと箱受け取るとまた嵐のように去って行く二匹のアウトロー。


 せらは追っ掛けなかったかしら。


 だって……今は気分じゃないし。


 そしたらメタがスカートの裾をつんつんするの。


「じゅりあ先生、ボクの棒きなこ一本あげる!」


 せらはお乳も出ました。

それではまた……

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