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知りあいの小動物の飼い主が天使だった場合

土曜日の20時更新です…

 グループホーム『おだんご』で先月から支援員をやっている里見洋介です。


 元売れない漫画家の三十歳独身ヤロウ。


 今日はお休みなので近所の商店街で買い物してます。手にはビニール袋、ポロシャツにハーフパンツ姿。ポロシャツは仕事のユニフォームを私服で着てます。何か面倒くさいんで。


 ボサボサ頭でチンタラ歩いてると。ウチのホームのアニマルセラピスト、うさぎのウサが向こうからてくてくやって来ました。


 ショートボブの女子と手を繋いで。


「あれが噂のリンさんか……」


 この小動物はボクの過去作品を知りたがるあまり、何故か飼い主さんの過去を暴露しまくる性癖がアリ。


「あ。里見ィ~」


 気付かれました。軽く手を振ってウサの出方を待ちます。


「里見って、ご近所だったの?」


「うん。ちょっと買い物してた」


「何買ったの?」


「教えない」


 ピンッて反応する黒耳。たたたと駆け寄って来て。


「何で言わないんだよー! 教えてよ里見ィー!」


「プライベート情報だからね」


「ウサ……行くよ?」


 後ろからリンさんが声かけする。


 ボクの方は見てない。成る程、ウサの暴露通りです。初めましてだけどボクは彼女の事をヤツから聞いてよく知ってます。ただ一つ想定外だったのは……


 メッチャクチャに可愛いんですけどーッ!


 バンドTにショーパンのラフなスタイル。二十歳だっけ? 高校生くらいに見える。


 どタイプです!


 こんな女子本当にいるんだってくらい。好きだ! 一目惚れ。


 思わず舞い上がるボク。


 ここは足止めする為、ウサにエサ撒いとかないと。


「ウサ……実はそろそろ教えてもいいかなって思ってた」


「何買ったの?」


「ボクの連載作品のタイトル」


「え、ほんとマジ? やったー!」


 はい、食い付きましたー。


 とりあえずリンさんと物理的に近づきたい。ボクはウサの情報を元に、道端で野良猫と会った時の要領で距離を詰めます。


 じりっ、じりっ、じりっ、じりっ。


 彼女が間合いを取りつつ、じ~っと観察してきます。


 逃げられないよーに、怪しいモンじゃありませーんって雰囲気を漂わせながら。目を合わせないよーに。


「ボク里見って言います。おだんごの職員やってて。ウサにはお世話になってまふ」


「……須藤です…………」


 挨拶、成功!


 でも最後、噛んだ事で我に返りました。


 ボク、コミュ力ほぼゼロの人だったアアア!


 高三の時に二週間付き合った彼女がいただけの、恋愛カースト最下層の住民だって事。忘れてました……


 あ〜、どうしよ?


 目が見れないし言葉も出て来ない。このままじゃあ、逃げられちゃう。何とか……何とかしないとッ。


「教えてよ里見ィ~。作品のタイトルゥ~」


 ナァイス! ウサ、グッタイミンッ!


 ボクは呼吸を整えて、今度こそ噛まないように言い切ったんです。


「血みどろ鎖ガマ京子と首無し地蔵のグルメ旅日記」


 すん……………………


 って雰囲気になって。


 でも、ボクは代表作だったから。胸張りましたよー! 売れませんでしたけど。するとウサが少し震えながら。


「単行本も……それ?」


「うん。です……」


 ウサはおもむろにリンさんの脚にしがみつくと


「リーンッ! 何かめっちゃ面白そー!」


「だねー。じゃネットで注文しよっか」


 お買い上げいただく事になりましたー。


 作品は作者の全てだから。


 口下手なボクには自分を売り込む最強の手段です! まぁ、元作者ですけど。


「里見ィ、買い物。何買ったのか教えてよ」


「え、あーコレ? そんな知りたいのかウサ」


「うん! 教えて教えて」


「教えない」


 ギャーってなるうさぎを抱えて。


 リンさんは会釈してから商店街へ歩いて行きました。


 ボクもちゃんと目を見て会釈出来たんです。宝石みたいな瞳……


 決めた。


 漫画家挫折して、やる事何にもなかったんですが。


 リンさんとお付き合いして結婚する事。これを新しい目標に設定します。


 何か……燃えて来たな。ボクは小声で吠えました。


「ぅぉぉぉぉぉぉぅ…………!」


 ふと、足下を見るとウサがボクを見上げています。


「あぅ?」


「里見ィ~」


 小動物が前足でクイクイって。屈み込むとウサが耳打ちしてきました。


「えとね~。リンのコト、エロい目で見たらコロす」


 とりあえずお友達を目指す事にしました。

それではまた……

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