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伊吹山ブラザース~魔王篇~

土曜日の20時更新です…

 とある民家の庭にある物置小屋。スチール製のでっかいヤツ。

 

 その中で密会するワシとうさぎのウサ。

 

「暗いー、暑いー。アイス買って来て三助ええ」

 

「買わへんわ。ホレ、もうすぐ来はるから。シャキッてして待っときウサ公」

 

 故郷の伊吹山から仇敵のウサを追いかけて来て、はや半年。野生のキツネだったワシは都会の色々でメンタルやられてたけど。

 

 治ったみたい。

 

 ウサとの因縁も、もう水に流した。右前足の義手も今はウォーハンマー付けとるだけ。

 

「何でこんなトコで会うんだよー。エアコンの効いた喫茶店行こーよ三助えええええ」

 

 駄々こね出しよった。今日これから、あるお方がウサに会いに来る。ワシのボスで動物界に革命をもたらすヤバいヤツ。そいつの名前は。

 

 ガラガラガラガラッ。

 

 物置小屋のドアが開いた。

 

 そこそこデカくて丸い影が立ってる。逆光で見にくいけどシマシマのスーツに黒ブチ眼鏡。


 コアラの田中さんね。

 

 田中さんの後ろからひょこって顔出した、もひとつのちっこい影。


 顔はモモンガのヨースケに似てるか。でっかい目に猫耳、尾っぽの長いおサルさん。好奇心丸出しで見とるわウサが。

 

「ウサ公。ショウガラゴのオポさんや」

 

「しょうがらぽ?」

 

「ショウガラゴ、オイラ、オポ。こんちはウサ。オイラ、お前、欲しい!」

 

「オイラ!」「カタコト!」気になるトコ全部突っ込み出すウサ。お前は手加減てモンを知らんのか。オポさんアフリカ産まれやから。

 

「オポさんな〝ビスケットの会〟の会長さんやねんけども。お前に入会して欲しい言うてはるの」

 

「ビスケット食べる会?」

 

「イヤ、世界征服目指してはる」

 

 ちょっと食い付いた顔のウサ。


 鼻ヒクヒクしながらオポさんを観察しとる。僕の金蹴り食らったら死ぬんじゃね、とか考えてるわー絶対。

 

「世界征服?」

 

「征服者、オイラ、なる!」

 

 ムッチャ食い付いた顔のウサ。


 ◯◯王に、オレは、なる! みたいな感じでオポさんが言うたから。ゴムゴムーとか叫んどる。


 あ、オポさんからビスケットもらいよった。何か一緒にカリカリ食うてるけど。

 

「実はなウサ公。オポさんの世界征服は」

 

「僕、入会する!」

 

 するんかいッ。イヤ、それでええけど。多分ビスケット食べる会やと思てる。まぁ、ええけど。

 

「したら、えー。田中さん、お願いしますわ」

 

「それでは私、秘書の田中の方から世界征服の活動について説明させてもらいます」

 

 田中さんに死んだ魚の目向けとる。


 わかるよ。お前の好物じゃないよね。でも好き嫌いアカンぞウサ。

 

「我々ビスケの会の理念は〝かわいいは世界を征する〟です。これまでペットとして人間に関わってきた動物達の意識を変える。それだけで世界征服は達成出来ると会長は気付いたのです」

 

「理念て何?」

 

「え? あ、理念とは基本的な考え方、です」

 

「かわいいは、何て?」

 

「えーと。かわいいは世界を征する、です」

 

「後半全部忘れた」

 

 あぶぅ! 


 ワシのウォーハンマーが唸るトコやったわ……。


 メンドいねんこの白いヤツ。田中さん、眼鏡曇ってて怖いし。

 

「…………今までペットが『人間は飼い主さん』て思ってたでしょ。それをね『人間は召し使いさん』て思うんです。世界中の全てのペットがそう考えるだけで立場が逆転、世界征服の図式が完成されます」

 

「何言ってんのかわかんない」

 

 ガンバ、ガンバ田中! 

 

 オポさんの目指すトコは無血革命なんや。


 でも意識が変われば行動が変わる。そこを訴えなアカンけど、ウサの脳ミソはコンクリで出来てるから……全てを弾き返す! 

 

 どーする、どーする眼鏡コアラ!

 

「えーと……あ、ハイわかった! 偉大なるオポは、こう考えたのです。ある日、宇宙人が地球をフラっと見に来ました。でも言葉わかんないからテレパシー使いますよね? そしたらペットが人間のコト『召し使い』って思ってるから『地球の支配者ってペットなんだー』ってなるでしょ。その、それで勝ちです。ハイ」

 

 長い沈黙。

 

 十秒経過。

 

 二十秒経過。

 

「了解です田中。宇宙人が来た時用ってコトですね」

 

 ウサが了解したあああああああああッ!

 

 おめでとう田中。よくガンバった、このコアラ野郎!

 

「さよならウサ。オイラ、お前、好き!」

 

 オポさんはウサとハグしてから次の現場へ向かった。

 

 ワシはいい表情でひと仕事終えた感じ出してるうさぎに、そっと声かける。

 

「したらアレやで。今日からリンさんのコト、召し使いって思わなアカンけど」

 

「メイドさんでいい?」

 

「お……おう」

 

 そっちの方が楽しそう、やと思った。

それではまた……

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