6.25生誕祭
土曜日の20時更新です…
「明日の土曜。リンの誕生日なんだ」
『ほっぺた』の六階建てビル屋上。ペット福祉サービスで、クッキーこねこねしまくった僕とモモンガのヨースケ。いつもここでダベってから帰る。
「えッ! ……お、おう」
ヨースケが微妙なリアクション返して来た。僕は自慢の黒耳がひこひこ。何か期待してるなコイツ。
「何ソレ」
「へ? あ、こーゆーのはアレだよ……待ってんの次の言葉をサ。あんだろ決まり文句、言ってみウサ。ホレ!」
「どんな?」
「お誕生日会やるから来る? みたいな!」
「やんない」
「やんないのかーい! やんないのかーい……」
しゅんてなるモモンガ大好き。大満足の僕。
「プレゼント。何がいいかなヨースケ」
「え、あぁ……何でもいいんじゃね」
「考えて」
「えーッ…………冷凍食品」
「オケ。じゃ冷凍食品にするよ」
「ダメえええええええええええええええッ!」
びっくりして後ろを振り返る僕ら。
屋上のドアが少し開いてて。そこから半分だけ体が出てる……ツインテ眼鏡のランドセル女子めっけ!
「瀬良じゅりあだー。こんにちはー」
「え、あ、うん。ポリポリ。何か奇遇だわねウサ。こんにちは」
「だ、誰ッ!」 ヨースケ、ビビりまくり。
瀬良はストーカー小学生なんだけど……ドアの影から堂々と出て来た。
あ、僕らの作ったクッキー食べてる。毎度アリー!
「ポリリ。話は聞かせてもらったわ。せらの耳が確かなら、飼い主さんの誕生日に冷凍食品を贈る気かしら小動物たち」
「うん!」
「ウサの飼い主リン。すっぴんでも綺麗なお姉さんだわね。ベランダで洗濯してるのいつも見てる」
「怖ッ! コイツ怖ッ、ウサ」
「ちなみに去年は何贈ったのかしら?」
「ポップコーン!」
「それはそれでグッと来るわね。でも冷食は中途半端だわ。リアルにダメ。ムササビの言う事なんか聞いちゃダメ」
「は? 誰がムササビなんですかーッ、小学生女!」
恐怖と怒りで敬語になっちゃったヨースケ。
「予算。いくらかしらウサ」
「二百円!」
「せらの一週間分のお小遣いなのだわ。そうね……お花はどうかしら」
瀬良がスマホでぴぴぴって。ヨースケが「花なんか美味しくないですけど!」とか敬語で叫んでる。
「六月の誕生花は……ユリ。花言葉は純潔・威厳・無垢なのね。聖母マリアにささげられた花が白いユリだったって。一本二百円」
「聖母マリアって何?」
「伝説の勇者じゃね? ウサ」
「ムササビは黙ればいいかしら。神様のママだわね聖母マリア」
ヨースケが瀬良に少し慣れて「ムササビはこんな可愛くないですけどー!」とか元気に突っ込んでる。
ヤマユリならよく知ってるよ。
伊吹山にも夏になると咲いてた。アレ食べるとお腹イタイイタイなる。でも、僕は花言葉を聞いてリンにピッタリだと思ったんだ。意味はわかんなかったけど。
「僕、ユリの花贈る。ありがとね瀬良!」
「ま、まぁ、その方がいいかしら。……ふふん」
これから毎年、この日はユリの花を贈る。
ハッピバッスデ、リン。
それではまた……




