パンダのパン田の日常
土曜日の20時更新です…
「スッ、スッ、ハッハッ、スッ、スッ、ハッハッ」
ダイエットしてるから身も心も軽い。
昔はゴロンゴロンしてるだけで良かったのに。今では長距離走るのもお手の物さ。
都会のパンダは何かと忙しくてね。
それにしてもコアラって執念深くて困るよ。仕事中(ゴミ捨て場の見回り)縄張りを荒らしただけなのに、あんなに追い掛けて来るんだもの。ちょっと怖かったかなぁ。
この地上で最も愛されるべき存在。パンダに嫉妬したんだと思う。
『選ばれてあることの恍惚と不安と二つ我にあり』
商店街の方まで走って逃げて来てしまった……。
まだお昼前で人通りは少ないけれど。実はパンダ、拳銃を持った連中にも追われていてね。表通りとかは避けるようにしてるんだ。防犯カメラも多いし。
路地に引き返そうとした、その時。
「パンダのパン田?」
おや? 足元で顔ペチャの子猫くんがパンダをじっと見上げてる。少し震えてて可愛い。
「ファンの子かな?」
「ウサ兄ちゃんがたまにお話してくれるの……パン田ですか?」
ウサくんの知り合いね。何で呼び捨てなのかな?
「こんにちは。動物界の頂点に立つパン田さんだよー。君、お名前は?」
「知らないヤツと話しちゃダメだって……ウサ兄ちゃんが言うの。だからお名前言えませんパン田」
イヤ、たっぷり話し掛けてるよね。呼び捨てで。
「あの……聞きたいコト」
もじもじしながらうつ向く子猫くん。
「パン田って指名手配されてる悪いパンダですか?」
「ん、ん、んー? えっ、とね……ウサくんは『パンダが世界中から愛される罪を犯してる』って言いたいんだと思うな多分」
パアアと表情の和らぐ子猫くん(名前不明)
「あの! パン田って何でパンダのクセにガリガリなんですか?」
「いつもアチコチのゴミ捨て場漁ってるってホントですか?」
「どーやったら川でザリガニ捕まえて貪り食べるトコ見れますか?」
瞳をキラッキラさせながら質問してくる。
一旦頭を整理しよう。この子、パンダのファンでいいのかな? もう呼び捨ては全然気にならないね。ただ一刻も早くこの場から立ち去りたい、と今は願ってるよ!
「あれ、パン田さん? 久しぶり!」
よく知った声。
ウサくんが買い物袋提げて目の前のコンビニから出て来た。トレードマークの黒耳がひこひこだ。
「やぁ、ウサくん。お久しぶり」
「お、メタ。パン田さんに相手してもらってたんか」
メタって言うんだこの子。パンダの知られたくない過去に随分と精通していてね。
ウサくんが発信元でいいのかな?
「アレ、パン田さん……また痩せたんじゃね? ひょっとしてまだケーサツに追われてんの? ガチ逃亡者だね、この犯罪者めー!」
デジャヴなのかなコレー。
パンダファンの皆さーん。パンダのイメージが危機に晒されてまーす。営業妨害でこの白うさぎ、訴えてもいいよね?
「そだ、パン田さん。良かったらコレお願い」
ウサくんがビニール袋を差し出した。
コッ、コロッケが二つ入ってる!
「僕達サンドイッチの気分なんだ。な、メタ」
メタくんが慌ててコクコク頷く。
何~……何だよコレ。そんな、ね。何かしょーががないなぁ、もう!
「食べ物を残したら罰当たるからね。ウサくんとメタくんに罰が当たったら大変だ!」
美味しくいただいた。
お礼に出血大サービスで、でんぐり返しを披露したらね。メタくんが「柔道の受け身出た!」とか言って大喜びだったよ。どういう意味かな?
さぁ! 二日ぶりにカロリーもチャージ出来たコトだし。仕事(ゴミ捨て場の見回り)を再開するとしよう。
ウサくんてホントにツンデレ。
それではまた……




