表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

49/229

じゅりあ(九才)がゆく!

土曜日の20時更新です…

 学校帰りのストーキングが毎日の日課。

 

 ランドセルにツインテ眼鏡の小三女子。瀬良じゅりあと言えば泣く子も黙るかしら。何で黙るのかわかんないけど。言ってみただけね。

 

 この街で最もイカれた小動物。

 

 白うさぎのウサがお友達と遊んでるトコを〝覗き見〟する。それがせらのハマってる今一番クールな暇潰し。

 

 今日はあの子、猫カフェに入り浸ってる。

 

 せらも潜入するのに五百円も払ったの。正直悩んだわね。だって月のお小遣いの半分だもの。

 

 それでもね、好奇心には勝てないものよ。


 ウサが店でどんな醜態を晒してるのか、ファンなら見たいじゃない。あ、ファンて言っちゃった。大丈夫。ちゃんと距離は保ててるかしら。推しに対する礼儀だし。

 

「打ってみ! メタ。ほらワン、ツー……違ッ! それじゃネコパンチだろがーい」

 

「ウサ兄ちゃん……だってボク猫だよう」

 

「肉球じゃなくて拳でサ、客の目を狙うんだ!」

 

 せらの推しが、エキゾチックショートヘアの子猫にパンチ教えてるのだわ。

 

 さすがね。五百円払って客の殴り方仕込んでるなんてクレイジーだわ。メタって子? 顔、打たれ過ぎじゃないの。ぺっちゃんこね。

 

「目を狙うなら、引っ掻いた方が効くかしら!」

 

 せらは隠れていた受付カウンターから、堂々と出て行ったわね。

 

「また出たな……えと。あ、瀬良じゅりあ!」

 

「子猫が人間相手に戦うのなら。両目引っ掻いて逃げるが正解だわね」

 

「そっか。よし、メタ。パペットマスターが来たら両目引っ掻くんだ。オケ?」

 

 メタって子。うつむいちゃってるかしら。

 

「パペットマスターって? せらに説明したいなら聞く耳持つけれどウサ」

 

「えーッ、めんどいめんどいよおおおおおお」

 

 ゴロゴロ転がり回る小動物。ふふ面白いのだわ。嫌いじゃないこのリアクション。

 

「あ!」

 

 子猫が受付の方見て目を細くしてるのね。

 

 そこには若ハゲの体操服男が立っていたのだわ。


 半袖Tと紺ジャージズボン。中学時代のやつかしら。Tにゼッケンボタン付いてる。やたら紐の長い肩掛けカバンに猫のバッジとかマスコットがじゃらじゃら。

 

 引くわね。


 せらは滅多な事で引かないのだけれど。


 よく逮捕されずにここに辿り着けたかしら。日本はアウトサイダーに寛容なのだわ。

 

「メタちゃーん、来たよーッ!」

 

 両手を突き出してフリフリしながら凸する若ハゲ。

 

「メタにッ…………触るなアアアアアア!」

 

 驚く子猫、の前に立ちはだかるウサ。

 

「あ! うさちゃんだぁ、どしたどしたー?」

 

 通せんぼのカッコのまま。捕獲されたわね。

 

「くっ……離せ離せようう!」

 

「どしたの、うさちゃん? 遊んでほしーのー?」

 

 両方の前足を掴まれて意味なく上下させられるウサ。なる、コイツがパペットマスターなのだわ。お人形のよーに動物達を操って支配するハゲ怪人。

 

 あ……ウサ泣いちゃたかしら。

 

 せら、今キュンてしたかも。何か、お乳出そう。乳出してる場合じゃないわね。

 

「……ちょっとFF外から失礼します貴様」

 

「え、えっ? きさま?」

 

「ここ、猫カフェなのだわ貴様」

 

「は? 知ってるけど……」

 

「猫カフェに兎さんいるかしら。いいえ、いません」 

 

「イヤ、だってここにいんだろ」

 

「その子せらの……その、アレよ。ほら」

 

 泣きながらこっち見る小動物の視線。はああ、仕方ないのだわ。

 

「お友達。お客さんとして来てるのだわ! 今すぐ解放しないと貴様の残ってる髪の毛、全部燃やすけど」

 

 ハゲが反射的に頭皮を両手でガードしたわね。

 

 ぽむ、ぽむん!

 

 ウサのワンツー出た。目、狙った目潰し。

 

「んえ? 目に何かフサフサって……ゴミ?」

 

 ハゲの手がお留守になった隙にウサ脱出。せらの後ろに隠れたかしら。


 今、完璧お乳出たわ。乳出たついでに言い放つ。

 

「いいことカッパ。せらの子を泣かしてこの程度で済んでスーパーラッキーだわ。さっさと川に帰るとよくてよ!」

 

「何を…………あ!」

 

 大人しく帰ってったかしら。

 

 ちょっぴりやり過ぎ? 


 ううん。だってせらがハートのキーホルダー握りしめてんの見て顔色変わったもの。これが何だかわかる人。持たせた人か、鳴らされた人だけね。

 

「瀬良じゅりあ。……ありがと」

 

 そっぽ向きながらウサが言った。は、恥ずッ! 気まずッ! せらはこういうの地獄の人だから。

 

「つ、次やる時はちゃんと引っ掻く事だわねッ」

 

「うん。わかった!」

 

 ちょっと情緒がアレなんで。子猫のメタ? の方見たの。そしたらまだ目が細いまんま。何か小声で言ってるかしら。

 

「ボクのお得意さんなのにぃ~」

 

 意外とプロフェッショナル。

それではまた……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ