ウサ、呪術使いの黒猫と戦闘になる
土曜日の20時更新です…
「何かがつけてくる」
アタイは黒猫のジュジュ。グループホーム『おだんご』に住み込んでる厄除けのリアル招き猫さ。
平日の日中はグルホに入居者さんが居ないから、こうして近所の縄張りを見回ったりしてんだけど……さっきからつけられてる。
つか、後ろの電柱。
黒耳だけはみ出てヒコヒコしてる。
「にゃん!」
気合い一閃、アタイは塀の上に飛び乗った。二メートル近くある。
ばいぃーん!
物凄い垂直跳びで塀の上にジョジョ立ちする黒耳。オーバーホールの白うさぎ、アニオタのウサだ。なかなかやるじゃないか、草食のストーカー野郎。
「あ、呪術パイセンだー。何か偶然。こんちは!」
「…………」
アタイは歩道に飛び下りると無言でダッシュした。
ここはシカトかましてバックれる判断。だって超面倒くさそーな目してたから!
ざすざすざすざすざすざすざすざすざすざすざす
マジかー。ついて来るウサが…………ん、ア、アレ? 速ッ。トップスピードでも引き剥がせん! まるで肉食獣のようなプレッシャー!
「パイセ~ン、僕のコト呪う~?」
時速四十キロで聞いてくる。
この子とは週一回おだんごで一緒に働いてんだけど。いつもアタイに呪術をかけさせよーとすんのよ。
ま、使えるんだけどね呪術。
「僕を弟子にしておくれよパイセ~ン!」
ざしゃあああァァーッ。
アタイは急ブレーキをかけた。遊歩道の噴水広場手前辺り。
「ハァ、ハァ……前に言ったよね…………コレって血でやるもんだから! アンタには無理」
「忘れた。てか弟子にしてくれるまで尾行しまーす!」
堂々のストーキング宣言キタ!
この白い悪魔にまとわりつかれる想像をしてみる。うん、ムリムリ。ムリゲーだわコレ。
はぁ〜あああぁぁッ……
仕方ないね。
「わかったよウサ」
「やったーッ!」
「……ここで始末させてもらうよ」
しゅしゅっ。アタイは素早く印を結ぶと術を発動させた!
「大人しく死ねやウサァァァァッ」
白うさぎの真後ろにある噴水から水がチョロチョロってヤツの方に伸びてく。
ぴちゃぴちゃっ。
額に水が降り注ぐ。
「水責めの術だよ! 兎は水浴びすると死す!」
「キャッキャッ」
楽しそうなウサ。
しまった! コイツは元野兎だってコト忘れてた……水にも耐性あんのねぇぇッ。
動揺するアタイ。
ウサは噴水の中に入ると「うわーい」とか言いながら前足で水をかけてきた。
パシャパシャ。
「にゃっ、やめ…………ネコに水かけんなよう!」
アタイは術で攻撃を続ける。ウサも攻撃の手を緩めない。
ぴちゃぴちゃぴちゃパシャパシャパシャ。
春の日差しが水滴に反射して
何か、キラキラしてた。
それではまた……




