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アイシテル

土曜日の20時更新です…

「愛してるキツネの三助」


 な、何言うてんねんコイツ……?


 ウサがワシの棲みかにやって来て、いきなりカマしてきよる。あ……ワシ今、市立公園の植え込みに住み着いとるんやけど。


 都会の荒波に揉まれてメンタルやられて。まだリハビリ中のワシに攻撃してきよるこの仇敵が。


「三助、愛してる」


 怖! どうゆうダメージ狙ってんの?


 ヤツにやられた右前足が疼くわ。ハサミ型の義手は気に入ってるけどモノ掴むと切れちゃうから少し不便。


「せ……世界…………」


「世界の終わりが来よーとも?」


 勢い良く頷く。ウサはワシの言いたいコトをだいたい80%位の確率で察してくれよる。


「うさぎ…………」


「うさぎ、カワイイ?」


 違っ。


「うさぎ…………」


「うさぎ、カッコいい?」


 違うわ!


「うさぎ…………」


「うさぎ、もういいです」


 アレ? 何か、項垂れて帰って行きよる。


 悪いコトしたんかなワシ?


 正解は『世界の終わりが来よーとも、うさぎの告白はお断り』なんやけど。


✳✳✳


「愛してるパン田さん」


 川でザリガニを捕まえているといつの間にかウサくんが背後にいた。


「やぁ、久しぶりだねウサくん。このパン田のバックを取るとはやるじゃないか」


「パン田さん使命手配中だからかな。また痩せた?」


「気のせいじゃないかな。今もホラ、ランチの準備中だよ」


 泥だらけのザリガニを持ち上げてみせる。体重のコトはあまり気にはしていない。まぁ、でもこの自粛期間(逃亡中)に50キログラムはダイエット出来たかな。


「ところでウサくん。聞き間違えでなければだが。さっき愛してるとかのたまってなかったかい?」


「うん!」


「パンダはね、地球上の全ての生命体から愛されてるんだ。あらためて言わなくてもわかってるよ」


「……犯罪者」


 捨て台詞を残して帰って行くウサくん。パンダに嫉妬とは可愛いらしい。


 ごめんよ。あまり一ヶ所に長居は出来ないもんでね。


 さぁ、ザリガニを持ってドロンするとしよう!


✳✳✳


「愛してるメタ」


 ウサ兄ちゃんが猫カフェ来ていきなり言ってキタ。


 今日は何の勉強だろ? いつもお兄ちゃんは生きてく為のアレコレをボクに教えてくれる。


「愛してるって何?」


 子猫のボクにはまずそこからです。いつもは変な顔とか面白い顔って言ってくる。


「何って。まんまだよ」


「愛って何?」


「え。そりゃーアレじゃんか、ホラ」


「何?」


「えと。愛してるの愛」


「わかりません!」


 お兄ちゃんからいつも『ハッキリものを言え』って教えられてる。ボクは子猫で変な顔だから舐められやすいんだって。


「イヤ、その……愛して」


「わかりません!」


 ダメ押しするとお兄ちゃんは、お耳垂らして帰ってった。ボク、ちゃんとやれてるよ!


 今度はいつ来てくれるのかなー。


✳✳✳


「愛してるロッキー」


 散歩中、馴染みの電信柱にオシッコを引っかけていると。ウサくんが声を掛けてきた。


「申し訳ないが今、忙しいんだ。街を巡回中でね」


「街をしょんべんで汚して回ってる、の間違いなんじゃね?」


「ハッハ。相変わらずだなウサくんは。噛んでやろうかなー」


「愛してる」


 二回言った。


 新しいジョークなのかなコレは。どこが笑い処かわからないが。とりあえず笑って済ませればいいか。


「ハッハー。はいはい」


「愛してる」


 三回言った。


 ひょっとしてコレはジョークではなくマジ告白ってヤツか? 彼とは良き仕事仲間でありライバルでもあるけれど。そういうのはちょっと……。


 うさぎは性欲強いって言うし私はトイプードルだし。そもそも種が違うワケで……イヤ、今時そんなの関係ないか。とにかく貞操を守る為にもここはしっかり線引きすべきだろう。


「ゴメンなさい!」


「へ? 何が?」


 ショック受けたと思われないフリ……かな。 済まないウサくん。友人のままでいよう。


 スゴスゴと帰って行く後ろ姿にアディオス!


✳✳✳


 僕はどんよりした気持ちでマンションの階段を。一段一段上がってた。


 これからお家に帰るトコだ。


 疲れた足取りで玄関ドアを開ける。ガチャッ。


「はああああ」


 ため息出た。


 リンは狭いベランダで洗濯物干してる。僕はベランダまで行くともう一回ため息ついてみた。


「はああああ」


「お帰りウサ。ため息なんかついちゃって」


「……何か。誰も教えてくれないから」


「そっかー」


 僕のオーバーホールを洗ってくれてた。オーバーホールは三着持ってる。今日は着てないから真っ裸です。


「愛してるリン」


「えっ……」


 オーバーホールをパンパンしながらリンは僕を見た。


 綺麗な黒髪のショートボブに宝石みたいな瞳。


 リンは僕の前にしゃがみ込むとギューッて抱き締めてくれた。いつもの緑ジャージ。お日様みたいないい匂いがして僕は安心安心。


「愛してるよ。ウサ」


 やっと言ってもらったー!


 うわ、こんな幸せな気分になるんだ……。


 魔法の言葉アイシテル。

それではまた……

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