ウサのお誕生日会 in IZAKAYA
土曜日の20時更新です…
ヤバい面子が集まっちゃってる。
今日二月十九日はウサのお誕生日。
去年は家でウサと私だけでお祝いした。それなりに楽しかったかな。でも今年は「お友達と居酒屋でパーティーしたい!」ておねだりされてしまったのだ。
正直『みんなで』っていうのが怖い私。
でも動物ばっかだし。やってみよっか、的なノリで引き受けたんだけど。
お店の八人掛けテーブルの個室。
奥には主役のウサ。回しとかあるんで私は一番手前の席ね。緊張する暇すら無く、好き勝手に頼んでくる皆の注文を捌くのにもう必死!
ようやっとひと息つく。あぁ、疲れたー。まくり上げてたブラウスの袖を元に戻す。
ふと隣に目をやると。
エキゾチックショートヘアの子猫ちゃんがコップでミルク飲んでる。可愛い。メタちゃんだっけ。
「メタちゃんは猫カフェで働いてるの? ちっちゃいのに偉いねー」
「……」
はい、ガン無視されたー。何で? ウサに助け船出してもらおうと思って奥を見る。
えええええッ!
頬杖ついて、ウイスキーのロックちびちびやっとるウチの子が。思わず二度見。
「あ、ウサってお酒飲むんだー。私下戸だから家に酒置いてないしわかんなかったよへへ。少しショックだけど大丈夫、うん。むしろ何かゴメン」
…………まさかのノーリアクション。
ひょっとしてハブられてる私? だったら暴れるけど覚悟はいいか動物共……ん?
お耳ペタんてしてるから聞こえないのか。何で。
彼の視線の先、向かい側の席には爆速で刺身の盛合せ食べてるラッコの姿が。凄いクチャクチャさせてるー。クチャラーだコイツ。しかも大食い、最悪。
「君、食事中は咀嚼音が聞こえないようにしたまえ。さもないと噛むよ。リンさんが」
ラッコの隣に座ってるおっきいトイプードルが忠告する。えと……初対面だよね? ウサの同僚だっけこの子。何で私を使った今。ビール大ジョッキでいってるけど大丈夫?
びくってなってるラッコ。子猫ちゃんも私見てびくってしてる。
「メタちゃんの事噛んだりしないしない。怖がらなくていいよー」
フォローしたつもりなのに。何故か涙目でキッて睨まれました私。ガチ凹む……。
行き場の無い視線がテーブル向かい側をさ迷う。
ウサの隣に座ってるキツネさんが義手で日本酒のコップを掴もうと苦労してる。ハサミみたいな義手。どこで売ってんのそれ。あぅパリンて、割れちゃったコップ。
「…………このハサミで……」
このハサミで? 何? 何、何、キツネさん。
「このハサミで。アナタを切り刻んであげましょうかッ!」
酔いどれうさぎが……何かフリーザっぽくね? 答えたら嬉しそうに踊り出すキツネ。当たりって事? どういう関係性なのココ。
その隣のアライグマかな、カクテルでベロンベロンになってる。さっきまで紳士だったのに。
「ウサさんにケンカ売る方はぁーッ! 私がボッコボコにして差し上げますぅーッ!」
怒りんぼだった。荒れてますけど。
「特定外来生物はお黙りなさい。ジョー」
フリーザうさぎに叱られて落ち込むジョーくん。……泣いてんのか? 酒癖悪いな特定外来生物。
そして私の向かいの席には。
人間の雄がいる。金髪のヒゲ面。
コイツが樽本だなー。ウサに色々といらん事吹き込んでるヤツ。さっきからズーッと失神してるみたい。椅子の背もたれに仰け反った形で。
「ウサ~。この人」
樽本を指差す私。
「頭、パーン」
素っ気ないうさぎさん。これが有名な頭パーンかぁ。救急車とか呼ばなくていいのかな?
ヤバそうなキャラ多めだけれど。
なんだかんだ言ってウサは凄いと思う。
都会に来て一年ちょっとでこんなにお友達がいるんだから。他にも仲良しのパンダさんとかいるらしいけど、今は指名手配中だから来れないんだって。
お誕生日会やっても呼べる人なんていない私。
せめてウサのお友達とだけでも仲良しになっときたいの。
保護者として?
ううん、違。単純に「受け入れて欲しい」って思ったから。ウサを通して変わってく世界が私にはあって。そこからは逃げないでいたいんだなー。
よっしゃ!
意を決して、隣にちょこんと座って唐揚げにトライしてる子猫に話しかけてみる。
「あの〜、メタちゃん。楽しんでいただけてますでしょうか?」
「知らない人と話しちゃダメだってウサ兄ちゃんに言われてるから……お話しない!」
成る程。私がいつもウサに言ってる事だね。
「猫カフェでも?」
「猫カフェでも!」
この接客にハマる人続出してるんだろうなきっと。
気付いたら向かい側の三匹プラス一人はみんなテーブルに突っ伏して潰れてる。あ、一人は失神か。
こっち側もラッコはお腹一杯で寝てるし、トイプーはさっきトイレ行ったきりで帰って来ない。
このタイミングで。
お店に頼んでたバースデーケーキが運ばれて来ちゃった! イチゴの生クリームのヤツね。
メタちゃんが目をキラキラさせてる。
「ケーキ好き?」
「……うん」
「食べる?」
「うん!」
私はケーキを切り分けると子猫と一緒にパクついた。何か今日は楽しかったな。
お誕生日おめでとうウサ。
樽本だっけ。とりあえず救急車だけは呼んであげた。
それではまた……




