子猫に試練を与えるうさぎ
土曜日の20時更新です…
猫カフェ『肉球の館』
駅前商店街にある古くて細長いビルの前。僕は月に一度、五百円玉を握りしめてここに立つ。
クッキー焼いたりセラピーしたりリンから貰うお小遣い貯めたりで五百円。そのお金でこのビルの四階にある館に通いつめてる。まだ二回目だけど。
エレベーターで四階まで上がる。出たらすぐ受付。マンチカンの朱美が取り仕切ってる。
「日曜の昼間だどもお客さ全然来ねーわ」
「そなんだ。メタいる?」
朱美が短い前足をしゃってやる。パッと見る限り猫どもはクタ~て昼寝中。
「五百円……」
僕にとっては大金だ。ポップコーン五個買える。
でも惜しくないよメタトロン。世界の広さくらい大きくて七十二枚の翼と無数の目を持つ天使(リンに調べてもらった)と同じ名前の猫。
僕は受付の皿に五百円玉をぽーんて投げ込んで颯爽とフロアに向かう。
細長いワンルームにテーブルが二つとキャットタワーや猫ハウス、ハンモックとかがある。
奥のテーブルに男のお客さん、一人だけいた。
背中向けて何かやってる。猫じゃらし? 接客中の猫ちゃんがいんのか。グレーっぽい毛の子猫……
メ、メタじゃんッ!
何だか頭の芯が熱くなる僕。自慢の黒耳もぴーんて。
「……メタにッッ、触んなーッ!」
助走つけてジャンプ一番、男のケーツイ目掛けてラビキックをぶち込んだ。ぽよーん!
「ふへ?」
間抜けヅラで振り返る若ハゲのチェックシャツ野郎。
意外とタフだ。コロす気で蹴ったのに……次は確実に決める。
「あー! うさちゃんだぁ。どしたのー。遊んで欲しいのかーホレホレ」
男は猫じゃらしで攻撃して来る。間合い取りにくぅ!
僕は一旦距離を置こうか迷う。イヤ、ダメだ。下がらない。喧嘩の時は下がらないって決めてる。ここは強引に、前に出る!
前足で猫じゃらしを捌いて懐に飛び込む。
得意のインファイト。相手のアゴに頭突きカマす為、全身のバネを溜める。ぎゅううううッ……。
「あ、時間時間! じゃまたね、猫ちゃんうさちゃん」
ハゲはそう言うと帰ってった。命拾いしたなハゲ。僕は奥で怯えてる子猫に優しく向き合う。
「お兄ちゃん……大丈夫?」
「あぁ、大丈夫だメタ。怪我はないか?」
エキゾチックショートヘアの子猫(♂)鼻ぺちゃのブサカワ。
「うん。遊んでただけだから……」
「ダメだぞメタ。知らない人と遊んじゃダメってリンがいつも言ってる」
「うーん……? わかった」
「お前は面白い顔なんだから。舐められやすい」
「ボク面白い顔なの?」
「うん。変な顔だ」
「変な顔……」
泣き出すメタ。
「泣くなメタ。男の子は泣いてたら舐められる。よし、僕が喧嘩の仕方教えてやる!」
「え……何か怖いよ」
「怖くない。つか、お前顔怖いから凄み方教えてやる」
「ボク……顔、怖いの?」
「怖い。面白いし怖いしやっぱ変だ」
「変な顔……」
泣き出すメタ。
「いいか。ガンの付け方は〝観の目強く、見の目弱く〟だぞ。こうだ、やってみ」
「……こう?」
「んだよーソレ! 違、こう……こうだって。ぷっ、変な顔だなーお前」
「変な顔……」
泣き出すメタ。
三十分があっとゆー間だ!
「あ〜、楽しかった。今度はカラスとの戦い方教えてやる。じゃな! メタ」
「うん。バイバイお兄ちゃん……」
メタがエレベーターまでついてきた。
いつかこの館を出て暮らす時が来たとしても。コイツが困らないよーに鍛えてやるんだ。
この世界は弱いと食い潰されちゃうからね。
受付の朱美が首振って、ため息ついてた。
それではまた……




