アライグマをつまみ食いするうさぎ
土曜日の20時更新です…
ペットの就労福祉サービス『ほっぺた』
僕は平日の午前中に一日十分、ここでクッキー作ってる。
仕事終わり。皆んなの溜まり場になってるコンビニ前。駐車場の車止めに座ってコロッケをカリカリ食べてる僕とアライグマのジョー。
僕の方から誘った。勿論奢り。
「仕事慣れた? ジョー」
「はい、おかげさまでございます。ウサさん」
「今日クッキーの生地伸ばしてる時、めん棒で主任ぶん殴ってたけど。何かあったの?」
「はい。あれは後藤さんが『こんなのウチの子供でも出来るのに』とかおっしゃったから。つい、頭に来てしまい」
「……まぁ、あの人そういう言い方するけど。殴っちゃダメ。仕事だし、相手人間だし」
「申し訳ございません。私アライグマなもので気が少々荒いのです……。そうだ。ウサさん、今からウチにいらっしゃいませんか? いつもお世話なってますから、ご馳走させて頂きたいのです」
「ジョーって飼われてんだっけ?」
「川沿いの民家の屋根裏の方に。勝手に住まわせてもらってます」
「◯◯◯ッティ?」
「アリエ? 食べ物も家の台所から頂いて来ます。主がボケたおばあさんなもので」
「◯◯◯ッティも借りパクしてた!」
「か、借りパク?」
「うん。借りパクの◯◯◯ッティ……だっけ? 家族で借りパク生活するヤバいアニメ」
「存じ上げなくて申し訳ありません。でも我々アライグマも屋根裏とか家族で住みますよ。今からいらっしゃいますか?」
「ジョーって言葉は丁寧だね。人は殴るのに」
「私は祖父がアメリカからの輸入組で随分と言葉で苦労したらしく。父から厳しく教育されたのです。一応特定外来生物に指定されております」
「何か、カッコいい! 特定何とかーッ」
「フフ、ほっぺたにもタヌキと偽って登録しています。人間には正体がバレると駆除されてしまいますからね」
「ジョーって色々ヤバいわー。もっと、もっと頂戴そーゆーのッ。ほらほらカマーン!」
「そういうの……あ、私達名前の通り、食べ物を水で洗う仕草が習性になっていて。滑稽でしょう? ハハハハハハ」
「……そんなんじゃない…………」
「しッ……失礼しましたッ。え、えと、えと、そうですね……あ! 前に一度人間に捕獲されたのですが、その時はゲージの施錠を破って脱走しました! 我々は手先が器用なので…………?」
「すごッッッ。ジョー凄いよ、リスペークツ!」
「あ、正解でしたか。良かった。それではウサさん、ウチの方に行きましょうか」
「うん。それはちょっと」
「え、え、私何か失礼なコトでも?」
「屋根裏はイヤ」
「あ~……」
思った以上にジョーが落ち込んだから。
コロッケ追加で奢ってあげた。
それではまた……




