売れ始めの漫画家に関する考察
土曜日の20時更新です…
「どうしても聞いて欲しい話があってさウサ」
ボクがそう切り出しても白うさぎは周りをキョロキョロしてます。フフ初めて来たのか高級うなぎ店。
ども、里見洋介です。現役パリパリの漫画家ス!
お陰様で漫画、ちょっぴり売れ始めました。なので高級うなぎ位なら食えるんです! 一人なら来ませんけど絶対。
出来ればリンさんと来たいなぁ。
「リンさん元気かウサ。ボクの事何か言ってた?」
「ううん、言ってない。里見ィの存在すら覚えてないと思う」
「単行本新刊出たんだよ。読んでくれてんのかな〜」
「読んでないし漫画読むと死ぬ病気だからリン」
ムキになって否定してくる小動物がカワイイ。今のボクにはそれ位の余裕があります。ええ、男としての自信ついたっていうかね。
「つか、話って何。里見ィ」
「あ、それな。実はこないだ担当が飯食いに連れてってくれたんだけど。ボクの担当ってまだ入社一年目の若い女の子でさー」
「ジェンハラ」
「ジェンダーハラスメント? よくそんな言葉知ってんなぁハハ」
「小動物ハラ」
「フェミニストみたいに詰めてくんのヤメてぇぇぇ。てか、その若い女子が連れてってくれたのがカレー屋さんで」
「カレー…………カレーセクハラ」
「どんなヤツそれえええッ? えと……あ、そんでその店が今話題のスパイスカレーの店だったのね」
ハラスメント縛りに飽きたウサ。テーブルの山椒に手を出してのたうち回ってます。
「ボクそーゆーカレー初めてだったんだけど。薬膳カレーっての? 平たい皿にサ、円柱型のライスが真ん中にドンて。その周りに二種類のルーがペーッて」
人の水ゴクゴク飲んどる。自分の飲めよ。
「そのルーがサ……」
テーブルを指でコンコンするボク。
「薄っぺらいんだよ!」
「里見ィの人生が」
「違! カレーのルーが!」
「味が薄い」
「違! 薄……浅いの!」
「味に深みがないってコト」
「違! 皿、浅い、ルーが!」
「あー。ルーが少ないんだ」
「そう、干上がる寸前の水溜まりみたいにッ!」
何かウケとるウサが。そんなオモロい事言ってないけどボク。
「そっかぁ。で、ちゃんと食べれた?」
「うん。ルーがシャバかったから浸して食った。焼き肉のタレで飯食う時みたく」
「ちょっと安心した里見ィ。こんなお店来るから調子乗ってんのかと思っちゃった」
「ん、そか? イヤ少しは調子乗ってるけど……」
「いつも通りの冴えないボサボサ頭にトレーナー。僕は嫌いじゃないよ里見ィ!」
「焼き肉のタレ焼き肉のタレ」って言いながら踊り出すウサ。ヤメロ高級店でお前。
「お待たせしました〜。うな重の並でございます〜」
満面の笑みになる白うさぎ。
それではまた…




