表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

220/229

王の帰還

土曜日の20時更新です…

 右の後ろ足をぐねってしまったんだ。


 いつものように公園でハトと餌の取り合いをしていてね。アレはポップコーンだったかな。


 夏休み中の中坊がイキって上に投げたブツをジャンプ一番、キャッチしたんだが。あろうコトか着地に失敗してこのザマだよ。


 パン田は王の威厳を保ってその場を立ち去った。でないとこの少年が罪の意識に苛まれてしまうからね。


 この星を代表するアイコンに怪我をさせたんだと。


 しばらく歩いて力尽きた。


 神々の愛を一身に受けた動物王の進軍もここまでか……アスファルトに転がって天を見上げる、その時。


 目の前の一軒家からちっこいのが飛び出して来た。


「ガリパン(ガリガリのパンダ)はお腹空き過ぎて動けなくなったんだとシマちゃんは思う!」 


 このシマリス、ウサくん関係の子だ。パン田は何とか逃げようとしたんだが家からおじいさんも出て来ちゃって。


「パンダさんだ、パンダさんだ、うわァァァーい!」


 飛び跳ねて喜んでくれてね、おじいさん。


 今はこの家で療養している。


「パンダさんパンダさん、おひるはカップラーメンでいい?」


「あぁ、勿論だともおじいさん。庶民の食生活にもすっかり慣れて来たし。おにぎりも頂戴するとしよう!」


「シマちゃんはパンダがザリガニ踊り食いするトコ、見たいと思う!」


「足が治ったらスグ見れるよシマちゃん。夏場は昆虫とかも貪り食うからパン田さん」


 今日はウサくんが遊びに来ている。


 シマちゃんとはアニメ大好き仲間で師弟関係らしい。お昼食べたら公園にパンダのエサ捕まえに行こうって大はしゃぎだ。


「でも、お家で匿ってもらえてラッキーじゃんパン田さん。束の間の休息」


「パンダは足悪いからスグ捕まって死刑になってたとシマちゃんは思う」


「全国指名手配中だもんねー!」


 ねぇ〜って盛り上がる仲良しコンビ。


 パンダがお家に居るという奇跡、存分に味わって欲しい。


 世界中の誰もが夢見るシチュエーションを叶えた君達に。コングラッチュレーション!


「おひるできたー! パンダさんラーメンとおにぎり。ウサもラーメン。シマちゃんはヒマワリのたね」


 食事中はとーっても静かなちっちゃい子達。


 ウサくんは正座してチュルチュルしてるしシマちゃんは一点を見つめてひたすらカリカリコリコリ。


 実のところね。


 パン田の足はもう殆ど完治している。


 ただ、この家の歓迎ぶりを想うと旅立ちをためらわざるを得ない。だってもうパンダ無しの生活は考えられないんじゃないかなー。


 おじいさんなんか「パンダさんまるくする」とか言って菓子パンいっぱい食べさせるんだ。愛され過ぎです。


 まぁ暫くココで天使の羽、休めちゃってもいいかも。


 だから足痛いフリ続けようと思う。


『ピンポーン』


 はーい! ておじいさんが玄関に走ってった。


「あ、こんにちは〜警察ですけども。こちらにパンダが居るって公園でシマリスとうさぎが子供達に自慢してたそうなんですが……」


「うん。いるよ」


 チッ! 


 シマリスとうさぎが目を真ん丸くしてこっち見てる。パン田は静かに頷いてから立ち上がるとエアコンの効いた部屋の窓を開け放つ!


 疾風の如く飛び出すパン田。


「パン田さん行っけぇぇぇぇぇぇぇぇぇーッ!」


 背中を押すウサくん達の声。


 パンダとして世界中から愛されるコトが罪と言うのなら敢えて認めよう。


 勿論、やり過ぎた感はあるよ。


 しかし天の恵み(※拾ったお金三百万使った)や魂の解放(※留置所のドアぶっ壊して脱獄)まで罪と呼ぶのはちょっと……ねぇ。ほら、パンダなんだしハハ。


 皆から「大丈夫だよ、ノーカンノーカン!」て言われるその日まで。


 パン田の旅は続く。


 ※占有離脱物横領罪&加重逃走罪。

それではまた…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ