パン田さんというパンダの考察
土曜日の20時更新です……
近所にある市立公園。
恒例の鳩にポップコーン投げまくる活動が終わってベンチでクールダウンしてる僕。
「やあ、ウサくん。お久しぶり」
パン田さん来た。一ヶ月ぶり…………
っっって、ウソォ?
普通のパンダに戻っとるーッ!
ガリンガリンのボロンボロンで修業僧みたいだったのに……真ん丸のパンダが今、目の前にいる!
「パン田さん、どした? パンダっぽいけど」
「ハハ。ウサくんはお疲れのよーだ。いつものパン田ですよー」
そう言うと後ろ足を前に放り出してぽてっと座ってみせた。完ッ璧な〝パンダ座り〟に公園の向こうの子供達がざわつき始める。
「そうだ。ウサくん、もしお口に合うようなら」
「何この箱?」
「特選A5和牛の詰め合わせだよ。良かったら食べて」
ボロボロだった黒のトレーナーも着てないし、鳩にやるポップコーンの拾い食いもしてない。
どーやらパン田さんはホームレスから脱出したみたいだ。しかも、かなり羽振りいい感じ? でも一体どーやって……
「ウサくんには、いつも良くしてもらってるからね」
「ありがと、パン田さん。でもどーやって、その……ほら、あれだったじゃん。ホー、ホームレ」
「高等遊民のコトかな?」
「へ? あ、うん。だったのに何で……」
その時『ウウウーッ』パトカーのサイレン音が。
ざぁささッ、ガゴん!
僕のお尻が一瞬浮いた。パン田さんがベンチの下に潜り込んでる。頭打ったみたい。
『ゥゥゥー……』サイレン音が遠ざかって行くと。
ベンチの下からゆっくり立ち上がるパンダ。
耳ヒコヒコさせながら見てる僕。
しばらく無言で突っ立ってる。
そしたら、いきなりゴロン! て必殺の〝でんぐり返し〟を決めてみせた。子供達から歓喜の悲鳴が聞こえて来る。
「何かなウサくん?」
イヤ、どや顔だけど。聞いていいのかコレ。
「…………指名手配、とか?」
「パンダに生まれついたコトが罪と言うなら、それは認めるさ」
「……ムズいコト言っても無駄だよ。最近僕リンと勉強してるから。簡単に脳ミソ、ショートしなくなってる」
空を見上げて少し悲しそうに笑いながら。パン田さんが呟いた。
「あれは半月前だったかな。たまたま通りかかった路地裏のゴミ捨て場でね。バッグに入ったお金を拾ったんだ」
餌場の見回りしてたら、ってコトらしい。
「しばらくしてからそのバッグは、郵便局強盗の犯人が逃亡の際に隠してったモノだとわかってね」
「……使っちゃった?」
「この世に落ちているモノは、全て神様からのギフトだと信じているよ」
「いくら使った?」
「三百万ゲットして二百はいったね」
「ケーサツ行け」
「うん、わかった。それじゃ行って来るよウサくん」
やけに素直なパン田さんにしがみついてハグしてあげる僕。「ウサくんは甘えん坊だなぁ」と言いながらパン田さんも、ぎゅーってハグしてくれた。
公園を出ると周りをキョロキョロ警戒しながら去ってくパンダ。子供達が嬉しそうに手、振ってる。
「ありゃ行かないな……」
僕は和牛の詰め合わせを大事に持って帰った。
それではまた……




