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JKエマ・フォードの熱い夏

土曜日の20時更新です…

 日本の夏は暑い。


 でもワタシの故郷、アメリカテキサス州の夏はもっと暑くて長いのだ。


 憧れの国、日本での留学生活も一年を迎える。


 日本語ペラペラになったエマ・フォード。職業はJK。


 赤髪のそばかす顔は相変わらず。駅前商店街和菓子屋でのバイトも継続中。もちろん資格外活動許可は取得済み。


 高校生活では興味のあった日本における動物言語学の歴史的背景について学んでいる。


 神秘の国ニッポン。


 90年前に渋谷の忠犬ハチの一言からスタートしたカンブリア大爆発的動物界の一大変革。B.ビフォーハチ元年。


 以降、日本の多くの動物達が言葉を話せるようになった。そう、日本だけが。


 今でも世界中の動物はごく一部しか言語能力を有していない。それは我が祖国アメリカ合衆国も決して例外ではなく。


 そしていつの時代も言語を解する彼、彼女達の運命は常に過酷なのだ。


 Dランドのキャラみたくスターになる者。


 スパイや軍事目的に利用される者。


 話せる事を隠す者。


 だからだろう。来日してこの商店街で初めて白うさぎを見た時の感動は今でも鮮明に覚えている。


 まるで御伽噺の主人公がすぐそこに居るかのような。


 居るかのよう……


「ウ、ウ、ウ、ウササン?」


「あ、エマじゃん。バイト中?」


「キャー団子売ってマース、ウササーン!」


 ワタシの推し! 白うさぎのウササンが我が物顔で商店街をトコトコ歩いて来マシタ。


 彼の前ではカタコトキャラを通すワタシ。


 だってウササン外人っぽいエマが好きだから。エプロンと頭の三角巾外すと赤毛をファサ〜てやりマス。外人アピ。


「ヒュゥゥゥゥゥゥゥ……」


 人生の全てを賭けて推しとの接触イベントに全集中するワタシ。


 心を燃やせエマ! 限界を超えろ!


「ウササン、こないだ商店街でカラスと追いかけっこしてるとこ見まシタ。凄く良かったデス!」


「あのカラスさ、メンチ切ってきたからバクチク投げてやった!」


 黒耳ひこひこお鼻ヒクヒク。メンチキルの意味わからんけどワタシ爆死。


「あ、えと。高校でキックボクシング部入りマシタ!」


「マジで? じゃあサ……アレやってる?」


「男子とマススパーやったらインローで金玉ばんばん蹴ってマス。もはやインローでなく金蹴りデス!」


「金蹴りのエマ?」


「デスデス!」


「かっけぇぇぇーッ!」


 しがみついてくるウササン。


 至福の時間! 推しとのイベント継続中。


「エアガンのサークルにも入ってスピードシューティング始めマシタ!」


「ふーん」


 マイガァァァッ…………


 実銃の話じゃないとダメか、しくっター。ここ日本だからなぁ……パパに頼んでGUN密輸出来ないカナー。


「そんじゃバイト頑張って」


「えと、えと、えと、アレ? 頭真っ白。その……お団子いかがデスか?」


「いらね」


 ガッテェェェェェェェンムッ!


 パニクって用意したネタ全飛びしマシタ……フッ、お団子て。


 ウササンが距離を取ってジッと見てきマス。


 さっきまでしがみついてたのにィ。このままだと彼が行っちゃう。何とか……何とかしないとワタシ!


 喰らいつけエマ! 諦めるなテキサス魂!


「ブラック&グリーンの市松模様……」


「え? キメツ?」


「昨日映画観に行きマシタ」


「ウソウソウソッ! マジ、マジ、マジ?」


 むっちゃ食い付くウササーン。脚にしがみついて来ちゃったァァ!


「どう? どんなん……どんなんやったん?」


 関西弁出てマス。ウササンの故郷伊吹マウンテン。


「ゴメンなさい。ネタバレしちゃうとアレだから」


「お願いお願いッ、教えてッ、教えてーなーエマー!」


 よじ登ってくるウササン。尊過ぎて三回は死んだと思フ。


「ハァ、ハァ……ダメッ、やだウササン!」


「意地悪ぅ! エマが意地悪やからァァァァァ」


 和菓子屋の前で赤髪振り乱して喘ぐそばかす少女に白うさぎ。


 結果、団子売れました。

それではまた…

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