小動物の来襲〜クレープ屋さん篇〜
土曜日の20時更新です…
商店街を外れた路地の隅っこに米粉のクレープ屋さんでけた。
米粉&豆乳生地の完全グルテンフリー。ワシみたいな小麦アレルギーのキツネでも安心していただけるデザートが食える夢のよーなお店。
狭い店内は四人掛けのカウンター席があるだけ。殆どの客は窓口でテイクアウトしてく。
ワシは席でソイツら眺めながらシュガーバターのぺちゃんこのヤツ噛ってんのが好き。オレンジジュースとメッチャ合う!
「いらっしゃせー。テイクアウトで宜しいスかー」
「シマちゃんです!」
窓口のカウンターの上に知った顔のシマリスが目ぇキラキラさせて座っとる。その横には白うさぎ。
「ひまわりの種のクレープ下さい!」
「ホットハニーチーズで宜しいスかー」
シマちゃんのオープニングブローを鮮やかなステップでかわす鼻ピ女子店員。ウサが硝子玉みたいな目でこっちジーッと見てくる。なんじゃお前。
「干からびたミミズのクレープ下さい!」
「生ハムバジルで宜しいスかー」
さすがに見かねたワシ。店の外へ。
「シマちゃんな、黒板に書いてあるメニュー頼まんと。意識高い系の店でミミズとか言うたらアカン」
「キツネの三助。シマちゃんはトッピングのお話してるんだと思う!」
「無いからー、ミミズのトッピング。シマちゃん果物好きやろ。バナナのクレープとか、どや?」
「ソレでいいと思う!」
カウンター席で仲良くクレープ食うてるワシら。
ウサはシマちゃんとバナナクレープ一緒に食べとる。さっきから一言も喋らへんけどコイツ。
「サックサクですごく美味しいと思う!」
そりゃ良かったなーシマちゃん。ワシは右前足の義手に付けたコンパクトミラーで毛先の遊び具合をチェック。鏡に見切れるウサの視線、気になるゥゥ。
「言いたいコトあんなら言えやウサ」
「ウマい」
「うん。イヤ、そうやなくて。何かこう……ワシのライフスタイルについて物申す、みたいな雰囲気出てんねんお前」
「別にィ」
「何かあるやろ! ワシ見て思ったコトとか」
「最近の三助イジり辛い」
「それやめて! イジり辛いってヤツ。前は公園の土地不法占拠して違法建築物建てとるエセ宗教の教祖とかムチャクチャ言うとったやんけ」
「や、それホントのコト……」
「来いやウサ、カマーン! 言いたいコト全部ワシにぶつけてこんかいハゲ!」
「……うーん。何か、今の三助って突っ込みドコロ無いんだよ。ちゃんとしてるから」
「ちゃ……ちゃんとしてるゥ?」
「ちゃんと服まで着てる」
「あ、コレか? コットン素材でアースカラーのTシャツにライトウォッシュのデニムジーンズな。トートバックは勿論天然素材や。テーマはさすてぃなびりてぃ」
「何言ってんだコイツ」
「えと、オーガニックで自然志向なライフスタイル目指しとるっちゅーコトです!」
そん時。
ひっさびさ頭ん中に山の神様の声、聞こえてキタ。
…………そんな自然自然言うんやったらぁぁ……いっぺん山に帰って来たらええんちゃうんんんん…………ちゃうんんんん……
「…………助三助三助三助三助! ヨダレ、出てる」
「はべぇし?」
「プッ……何か久しぶりに三助のアホ面見れてホッとした僕」
ウサの目がやけに優しい。シマちゃんもバナナ一個くれた。
カウンター席でキャッキャするワシら。
呼び出し食らったからなぁ。
いっぺん帰ってみるか……故郷の伊吹山に。
それではまた…




