スターティングオーバー
土曜日の20時更新です…
「バッタ、捕まえたよロッキー!」
「でかしたウサくん! 早速缶缶に入れて爆破してみよう」
公園の植え込みでキャッキャ騒いでる僕ら。
暑くてジメジメするこの季節はバクチクで遊ぶコトにしてる。ストレス、溜まるからねー。
ベンチの方をチラ、て見てみた。
さっきから見慣れない男が座ってて……気になる。お髭と髪の毛ボーボーで黒縁メガネの若いヤツ。青白い顔しちゃってサ。パジャマ着てるよねアレ。
「ウサくんも?」
「だねロッキー。今5つくらい突っ込んだ心の中で」
僕達はバクチクを握り締めてベンチに近寄ってく。
小動物チックに「ビビリだけど好奇心には勝てないよ!」的な雰囲気出しとけば大抵は距離詰めれます。
「……何でパジャマ着てんの?」
髭がゆっくり僕の方見た。
「兎か。コレ部屋着なんだけど」
「失礼。髭に何か特別な意味とかお有りなのかな?」
「ううん、剃るの面倒臭いだけ。ちっちゃいゴリラ」
怖いくらい普通の答え返ってキタ……
更生施設から逃げ出したスピの人かと思ったのに。
すっかりキョーミ無くした僕らがバッタの処刑に取り掛かろうとしてると
「もうすぐこの辺りにも雹が降る」
え、ピーカンじゃん。顔を見合わす僕とロッキー。
そしたら普通に降って来たんだ雹!
慌ててベンチ下に逃げ込む僕ら。倒れた缶缶からぴょんぴょん逃げてくバッタ。
「…………どうやら止んだみたいだねウサくん」
「ふうう。予言当たったじゃんか髭」
ヤツを見上げて驚く。
血だらけ、なんですけどーッ?
「うわ、ヤバ! ちよっオマ……何事もなかったみたいなお澄まし顔で」
「救急車呼ぼうかウサくん? 頭からぴゅううて赤いのが出てる!」
「どうせ直ぐ戻るから」
「◯スリがキマってて無敵の人だー!」
「何で雹のコトわかったんだい? アレか、気象予報士さんだ。サイン下さい!」
大コーフンの僕とロッキー。ベンチの周りをグルグル駆け回る。
「別にそんなんじゃないけど俺」
「ナチュ? ナチュラルハイの人?」
「アレか、予報士の試験落ちましたってヤツだ。サイン下さい!」
血みどろ髭モジャ男が少し笑った。コイツまだ引き出し持ってるよ絶対!
「あと少しだけ時間あるから……面白い話、聞かせてやろうか」
頭からぴゅうう、ぴゅううて吹き出してるモジャ男。僕達は残された時間を考えるとお股キュッてなった。
「自分が人生をやり直せる事に気付いた時、人ってどうすると思う?」
質問苦手だからスルーする。
「……最初の頃は色んな事に挑戦した。でもな、最終的にやる事無くなって何もしなくなるんだよ」
「……………………」
ん……?
えッ? えッ?
「俺が髭剃らない理由」
「オワタ?」
「うん、終わり」
何コレー。
全然つまんなーい。ロッキーの方を見たら腕立て伏せしてた。
「……かれこれ三十回は繰り返してんだ俺。ワンターン三年で同じところに戻る」
いつの間にかモジャ男、消えてた。ロッキーは絶賛腕立て伏せ中。
えと、こーゆーのアニメで見たコトあるよ。
タイム……リ? リー何だっけ?
つまんないから考えんのヤメた。
それではまた…




