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アライグマのパパ活4

土曜日の20時更新です…

 好きな香りに誘われてやって来た。


 雨上がりの街を見下ろしながら鼻を鳴らすオレ。


 腐った卵の芳醇な香りにピリつくような苦味のアクセントが効いている。所謂負の感情ってヤツさ。


「またここだったか……」


 この辺りは知ってる。確かあの小動物の縄張りだったな。オレは上空から堤防に舞い降りると漆黒の翼を折り畳んだ。


「いい感じに仕上がってるじゃあないか」


 川っぺりに座り込んで動かないアライグマに声を掛ける。横目でチラと一瞥してきた。


「……羊人間さんだ」


 またか。


 あのうさぎといいこの界隈のヤツら羊と山羊の区別もつかないのか。本来はセンシティブな問題なんだがな。オレは〝黒山羊〟だ。


「お前のドス黒いソレ。オレに喰わせてくれるんなら願い事を一つ叶えてやろう」


「ドス黒?」


「誤魔化さなくていい。貴様が今抱えてる感情には価値があると言ってるんだ」


「願いを叶えてくださるのですか?」


「そうだ」


「申し遅れました。私、荒ぶる特定外来生物ことアライグマのジョーと申します。実は息子ルキアの性癖について思い悩んでおりまして……」


「性癖、消してやろうか?」


「出来るんですか?」


 久々の獲物を前に心も体も躍る。オレはクネクネ踊りながら契約に関する説明を事務的に始めた。


「本サービスをご利用いただく前に、以下の利用規約について説明致します。本サービスの利用者は……」


「ジョォォォォォォォォォ〜」


 ヤツが来た。


 叫びながら堤防を駆け下りてくる白うさぎ。チビのアライグマと一緒か。


「あー! 羊人間さんだァァァッ!」


 いつもオレのアイデンティティを削りにくるナチュラル・ボーン・クラッシャー。今一度言うゾうさぎ。オレは山羊人間だ、と心の中で。


「ジョーと何やってたの羊? 僕も空飛びたい!」


 そんなサービスはやってない。と前にも言った。


「羊のオジサン……何かパパっぽい! パパっぽいよ! ね、ウサパパ!」


 チビアライグマは何を言ってる? ボケが二匹居るとキツいんだが……ん、アライグマジョーの負の感情が濃くなってるな。ヨダレ出る。


「僕ね、さっきルキアに意地悪しました羊!」


 また悪い子アピか。お前は天使属性だからキョーミないんだうさぎ。


「オジサン、何かパパっぽいコトやって!」


 このチビの方はまだノビシロあるな。オヤジの負の色がまた濃くなった。お前好きだ。


「僕には夢があります羊。それは空が飛べるよーになるコト!」


 早く帰れうさぎ。


「オジサン、何かパパっぽいコトやって!」


 二周目キタな。オヤジが反応するから好きだゾお前。ちょっとパパっぽい事やってみようか。


「このナイフをやろうチビ」


「うわー! 今、いきなりナイフがパッて出た!」


「これはラブレスがデザインしたビッグ・ベアだ。ダブルエッジグラインドのブレードにハンドルにはサブヒルトが付いてる」


「僕には銃出して羊!」


 しがみついてくるうさぎをシカトしつつオヤジの感情が濃くなってヨダレが出ちゃうオレ。


「パパだーッ! 羊パパーッ!」


 チビも抱きついてキタ。


 その時、オレの中のパパが目覚めた。


 愛おしいオレの息子。


「よしよし……それじゃアレだ。今からパパとファミレス行くか?」


「うん、パパ!」


「うん、羊!」


 お前は帰れうさぎ。


 オヤジの負の感情が熟した香りを放っていたが。オレはもうヨダレなんかナッシング。


 チビとメシ食いに行く。それだけ。


 オレの可愛い可愛い息子。

それではまた…

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