呪いと友情
土曜日の20時更新です…
胃が痛い。
暑くて胃が痛い。まだ五月なのにね。昼間は外、出たくない。
気付いたら晩御飯何も無かったから。ウサが帰って来る前にコンビニのコロッケ買いに出掛けた。夕方ならちゃんと息が出来る。
白Tに黒の半パン、サンダル履き。見た目中坊の私。
「…………リン……」
川沿いの道。新幹線高架下を通った時、どっかから声がした。人影無いんだけど。
「ココだっぺさ……」
上を見る。コンクリの天井に小魚が張り付いてた。
ボディは真っ裸の小人でワカメの褌してる。私目掛けてダイブして来たんでステップ踏んでかわす。
ベチャって頭から落ちた。尾ビレぴちぴち。
「何でかわすんだっぺさリン! 抱きとめてくんないとォォ」
「ゴメン、チカちゃん。トビウオかと思って」
自称〝呪いの王〟はプリプリ怒りながら何だか周りを警戒してる風。
「追われてるんだぺさよワイ」
「保健所の人?」
「違うわ。パンちゃんだぺ!」
パン田さんの事ね。呪いの契約相手だってウサが前に話してくれてたっけ。破局したみたいだけど。
「ワイが契約解除した途端、拡大した縄張りをコアラ軍団に乗っ取られたらしくて。またワイのコト探しとるっぺさよ」
「そなんだ」
両腕をこっちに突き出してキタ。抱っこか。
薄着だからヤなんだよなー、チカちゃん生臭いから。話の流れからしてウチ来る気みたいだし。
「また契約したげればいいじゃん」
「ダメー! パンちゃん警察とも戦争する気だっぺ。ワイはもっと動物ぽくやって欲しーの。反権力とか、そーゆーのいらない」
割とこだわんのね呪いのクセに。んで、まだ抱っこポーズしとるゥ〜。
仕方ないから右の肩に乗っけてると
ザッパァァァァァァン!
いきなり川からガリンガリンのUMAが上がってキタ。白黒で野良犬みたいに小汚い…………あ、パン田さんか。
「ふうう、暑いから水浴びをしていてね。王の気まぐれとでも言うのかな。お陰で探し人が見つかったようだ」
「パ、パンちゃん……」
チカちゃんが私の首の後ろに隠れよーとする。ヤメロ髪の毛に臭い移るからァ。
「呪いの王。イヤ、チカちゃん。パン田は王としてではなく友人として、君にお願いしたいんだ」
「友達?」
「うん。お友達として」
「動物ぽいヤツ?」
「うん。ほのぼの系」
「何だっぺさ?」
「街中のポリ公を血祭りに上げたいんだ」
「ニョヴァァァァァァァァァァーッ!」
奇声上げながら川に向かって駆け出してく小魚。そのままチャポンて飛び込んだ。
「させるかァァァァァァッ!」
ガリガリパンダが後を追って飛び込んだけど。水に入ると素早いチカちゃん、クロールで華麗に引き離す。尾ビレぴちぴち。
すぐ諦めて戻って来た大熊猫。ズブ濡れだと野良犬感ハンパないね。
「ふうう、こんにちはリンさん。暑いから水浴びをしていてね。王の気まぐれとでも言うのかな」
そこからやり直すつもりかコイツ。
「これからディナーなんだ。少しばかりコアラくん達のお相手をしてあげるつもりさ。それじゃあお先に失礼するよ」
餌場(ゴミ捨て場)の取り合いすんのね。
せっかくチカちゃんと組んでご飯食べれるようになったのにサ〜。また元の生活に逆戻りだよ。
……何だかなぁ。
「ちょっと待ってパン田さん」
「ハイ?」
「暑いからサ、コンビニにアイス買いに行くトコなんだけど」
生ツバごっくんて聞こえた。
「良かったら一緒にアイス、どう?」
「せっかくのレディのお誘いなんだがリンさん。パン田はこれから王国軍を率いて蛮族退治に向かわなければ」
「菓子パンもつける」
「イエス、マイロード!」
パンダと歩く夕暮れの道。
お風呂も入れなきゃだな、と思った。
それではまた…




