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小動物の来襲〜ハロワ篇〜

土曜日の20時更新です…

 目の前のテーブルの上にリスちゃんがいるねぇ。


 ここ公園かも。なんて職場で一瞬現実逃避しちゃったよ。


 最近疲れが溜まっててサ。五十を過ぎると中々抜けないんだなーこれが。私は眼鏡をクイッとやるとリスちゃんに話し掛けた。


「え〜……ここハローワークの相談窓口なんだけど。目的、合ってるのかな?」


「シマちゃんです」


「あ、うん。シマちゃんは何しに来たのかな?」


「お仕事探しに来たと思う。宜しくお願いしますオジサン」


 いい子だね。ここミドル・シニア世代のブースなんだけど。


「えーと、動物さんの仕事紹介は区役所の福祉の方でやってると思うよ」


「チッ」


 舌打ちした! シマちゃん……じゃなくて隣にいる黒耳白うさぎの方が。さっきから硝子玉みたいな目でこっち見てて何か怖い。


「シマちゃんはたくさん働いてお金稼ぎたいと思う。だからココに来ました」


「あ、だね。でも小動物さんは集中が続かないから一般じゃなくて数分程度の就労の方が……」


「クソ」


 クソって言った! 何でか分からんけどさっきから隣のうさぎがイラついてて怖ッ。


「シマちゃんはアニメ大好きだからアニメの会社で働けると思う。ジ◯リとかでもいいです」


 いい子だね。小学生が将来の夢発表する時みたいにお目々キラキラして言ってくれた。ミドル・シニア世代の相談窓口で。


 あー! 何か眩しい!


 眩しくて直視出来ないわ、この子。


 普段どんよりしたジジババばっか見てるから余計に、ね。こんな時は隣の硝子玉みたいな目で中和して……ん?


 睨んでるー。メンチ、切られてるー。


 これどーゆー意味で? シマちゃんの要望に答えないとコロス的な?


「鼻毛ムカつく」


 鼻毛、でしたー。


 容姿に対するクレームで良かったわー。イヤ、良かないけど。色々と理不尽な事言ってくる利用者さんもいるもんでね。こんなのはまだカワイイもんです。


「鼻の穴にバクチク」


 通報……するか? 危害加えられる可能性あるかもだ。鼻毛のせいで。


 あ、シマちゃんが何か食べ始めた。


 飲食禁止なんだけどなー。どっから出した?


 ホッペ! リスだもんね、癒やされるわーこれ。ハハまた現実逃避してしまった。


「カリカリカリカリカリカリカリカリ」


 コロッケ食うとるねーうさぎ。いいのかな草食動物が油っこいのイッテて。こんなの食ってるから怒りん坊さんになるんだよ。


「シマちゃんは待ちくたびれたと思う」


「あぅ、ゴメンなさい。えーっとアニメ関係のお仕事希望だったよね…………ムリです」


 えッ? て感じでこっち見てくるシマちゃん。


「人間じゃないとムリ」


 ガビーン! て文字が頭に突き刺さってる。漫画だったら。


「シマちゃんアニメ……ムリ…………」


 泣く? 泣いちゃうのかな。前足をテーブルについてプルプルしてるリス。漢字で栗鼠。


 シマちゃんには可哀想だけれど。


 小動物の仕事世話してる場合じゃないから。物価高で高齢者も仕事探してるこの時代にサ。


 ま、ちょっとした気分転換にはなったけど。


「やっぱムリだったねシマちゃん」


「うん。師匠……」


 うさぎがシマちゃんの肩抱いて慰めとる。ただの猛獣かと思ってたわ。


「実はねオジサン。動物福祉の就労でアニメのお仕事なかったからこっち来てみたの。ね、シマちゃん」


「うん。師匠」


「これで諦めついた?」


「うん! 師匠」


 小動物コンビはちゃんとお辞儀して帰ってった。


 テーブルの上には。


 コロコロウンチてんこ盛り。

それではまた…

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