優しい世界
土曜日の20時更新です…
最近三助が何か変。
公園を不法占拠して違法建築物建ててるカルト教団の教祖キツネ。伊吹山じゃアホ面こいて僕を散々追い回してたクセに。
ここんトコ妙に落ち着いてる。
心穏やかに生きてます、的な。生命力低めの感じするんだけど。
「……ご飯奢ってくれるんは嬉しいんやで君達。でもこの店ワシの口に合うモンがないかも」
「焼肉! 肉好きじゃんね三助」
「あ、あのなウサ……」
「じゃんじゃん肉を貪り食ってくれ給え三助くん!」
「いやロッキー、だから……」
小麦アレルギーになっちゃった三助。
色んなモノ食べれないからとりあえず焼肉屋に連れてキタ。あとさっき君達って言ってなかったコイツ?
「生肉がよかったら焼かずに食えばいいよ三助!」
「焼肉なら小麦のこの字もないからね。安心してしゃぶりつくがいい! 三助くん」
「あ……うん、まぁ」
「臓物! 臓物頼む? 三助」
「生き血とかあればいいんだが三助くん!」
「うぉぷ」
オロロロロロロロロロロロロ〜。
三助マーライオン!
焼肉屋さんで三助マーライオン!
僕とロッキーは飛び上がって大笑い。だってビックリしたんだもん。
「おふぅぅ…………ジッと見てくんなや君達」
やっぱ君達って言った。今日の義手日傘付いてるし。何か変だコイツ。
「実はな、小麦食えんよーになってから。メッチャ体調よーなってな」
「へぇー」
「毛並みツヤツヤのスベスベ」
「へぇー」
「身体も締まってきて。美しい獣、みたいな?」
僕とロッキーは相槌打つのをヤメた。痩せキツネが面白いコトほざいてくるゥゥ。
「それで美容に目覚めたんよワシ。腸活とかもやり出してな、気付いたらヴィーガンになっとった」
「ヴィーガンて何?」
「肉も食わんし卵も乳製品も食わん。動物性の食いもんは口にせん。野菜だけ」
だからかー。この枯れた感じ!
「モデルさんとかやってんでヴィーガン。ワシにはぴったりのライフスタイルやヴィーガン」
コイツ……自分が血に飢えた肉食獣だって現実。なかったコトにしよーとしてる三助のクセに。
「でもタンパク質はとった方がいい三助くん。それじゃ筋肉は育たないゾ!」
筋肉獣が野菜かぶれにマウント取り始めた。
「悪いけどなロッキー。ワシが目指すんはしなやかなボディ&ライフスタイルやねん。筋肉いらん」
「NO筋肉NOライフって言葉知らないのかな?」
「脳筋ライフ? 最悪やねんけど脳ミソまで筋肉やと」
このままじゃロッキーが相撲取るって言い出す絶対。お店に迷惑かかるから止めに入るかー。ゲロも吐いてるしなー。
「お肉食べれないなら仕方ないよロッキー。三助の行きたいお店行こ」
「前から行きたかったトコあんねん!」てテンアゲの三助。意識高い系女子かお前。
ヤツに連れられてK駅にあるヴィーガンのレストランにやって来た僕ら。良質の毛皮目指してるキツネが入れんのかと思ったけど。入れた。
美肌ランチ? ひよこ豆の何たらとか酵素ジュースだとか小さいお皿に入ってるクズ野菜とか。
いちいち感激して食べてる三助見てると僕……
何だか涙出てきた。
「どうしたんだい? ウサくん」
「えふ、グスッ……あ、あのねロッキー。三助は小麦アレルギーで大好きなうどんも食べれなくなったのに。今はこんな幸せそーでホント良かったと思って」
「だね。彼の言ってるコトはトンチンカンだけれど。友人として祝福してあげよう!」
それから僕とロッキーは大豆ミートってヤツのハンバーガーを食べてみた。
普通に美味しくてつまんなかった。
それではまた…




