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THE GAIJYU!

土曜日の20時更新です…

 わしらには生まれた時から頭の中に〝ある命令〟が書き込まれておってな。それに従って生きとるんじゃ。


 疑問に思ったコト?


 フホホそんなのは一度だってない。そういうモンなんじゃよ。


 申し遅れたのう。


 わしの名はチン太。年寄りの老いぼれイタチだわい。


『人間に迷惑をかけろ』


 この声に導かれて。若い頃は明けても暮れても人に迷惑かけるコトに専念したもんじゃあ。


 それこそが、イタチ道。


 人の家に侵入し、夜中に天井裏を駆けずり回り、その家の連中から安寧を奪い去る。これ以外わしらに何を望めと言うのかな。


「……むっちゃ語るやんジジイ。捕えられた分際で」


 小汚い木造アパートの一室。金髪のヒゲ人間が話し掛けてきよった。


 なんで思わず


 ガシャーン!


 檻に頭をぶつけてしもたフホホ。頭突き、カマそうとしての。


「捕獲器。頑丈やろそれ。頭大丈夫?」


「今直ぐわしをここから出しなさい。さすればアゴパン一発で済ませてやろう」


「夜中にヨタヨタ天井裏歩き回るイタチ、自由にするワケないやろジジイ」


「チン太様と呼べ」


「イタチってどこでもこんな感じだよ樽本ォ」


 黒耳の白うさぎがヒゲ人間の後ろからヒョイと顔出しよる。


「やたら細っこくてプライド高くてアタオカ。僕イタチ嫌い!」


「ヒゲの男。今からそのうさ公泣かすんでわしを早く出しなさい」


「もう二度とウチ来て悪させぇへんて約束するんやったら出したるけどジジイ」


「わしの話聞いとったか? 人に迷惑かけるのが仕事じゃ言うとるよね?」


「話通じないから樽本。こーなったらヤツを呼ぶしかないと思う」


「せやなウサ……すまんジジイ、ごめんやで!」


 そう言うと檻のゲージを開け放つヒゲ。フホホようやく理解を得られたかの。


 わしがゆっくり檻から出ると。


 うさ公が何やら押入れを指差しとる。


「あぁ赤コーナーよりぃ。地獄の処刑人、マスクド・あゆの入場です!」


『とっとこー、走るよハム◯郎ー♪ すみっこー、走るよハム◯郎ー♫』


 押入れからご陽気な曲に乗って。覆面被ったハムスターのオナゴがとことこ出てきよった。


 イタチとネズミ。


 メンタルは大丈夫なんか? 狩る側と狩られる側じゃけど。


「ご主人しゃまを悩ましゅイタチめぇぇ。アタイがぶっコロでしゅ!」


「フホホちっこいお嬢ちゃんや。怖くて頭がどうにかなっとんか? わし、イタチじゃぞ」


 ガキョ。


 お股の辺りで変な音したもんで。下見たらハムスターが金蹴りしとった。


「ほおぉぉぅぅぅぅふ」


 身体がくの字になったわしを上からガッと捕まえるオナゴ。今度は首絞めてきよる。


「出たーッ、とっとこの必殺ギロチン・チョーク!」


「ジジイ死ぬんとちゃうか? ちよ、あゆ手加減……」


 アリャ?


 もうお迎え来たんかわし。目の前真っ暗。


 気付いたら畳の上。目の前にヒゲとうさ公。


「へ? アレ? わしゃ一体……」


「二度とウチで悪させぇへんて約束。出来るか?」


「うん、て言えイタチ! うん、て!」


「じゃからぁ、わしの仕事は」


 後ろから首キュと絞められて、また真っ暗。


 ほっぺをパチパチやられる感じで目が覚める。うさ公が殴っとった。


「気が付いた! うん、て言わないと……ああまだ早いとっとこォォォォォォォォッ」


 またキュて。


 おしっこチビったと思う。


 その後意識を取り戻したわしは、もう二度と悪さをせんと約束して解放されたんじゃ。


 人間は怖いのう。そしてハムスターは鬼。

それではまた…

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