世界がひとつになったお話
土曜日の20時更新です…
「あと一ヶ月かぁ……」
緑ジャージの上下でマンション五階のベランダに出た私。
そっと深呼吸してみる。
鼻水がツーて垂れてきて目がショボショボ。こんなのがあと一ヶ月続くのかぁ……いい天気なのにね。この世から消えろよスギ花粉め。
「大阪ッ!」
部屋の方からウサの声。今、大阪って叫んでなかった?
「大阪ッ! 大阪ッ!」
テレビ見てた小動物達が騒がしい。今日はトイプーのロッキーとモモンガのヨースケくんが来てる。
気付いたら皆ベランダに勢揃いしてた。な、何よ?
「リン、僕ら大阪に行こうと思うんだ!」
「へ? いきなりどしたのウサ」
「今、大阪がスゴいらしいんだリンさん!」
筋肉の化身も訴えてくる。アンタらさっきまでバクチクの新しい遊び方について会議してたよね。
「大阪のバンパクってのがヤベーらしいからリン!」
モモンガが皮膜びろびろさせながらコーフン気味。
何だ万博かぁ……
「僕、目玉オバケと金玉蹴り合いっこしたい!」
ミャクミャ◯とかいうヤツの事ねウサ。
「レガシー……」
どこに引っかかってんのロッキー。
「俺、最初は塩でいく」
何言ってんだかわかんないヨースケくん。
情報が錯綜してる。確かにイマイチ分かりづらいよね万博って。一体何するとこなんだ万博。
「バンパク! バンパク! バンパク!」
メッチャ盛り上がってるー。ヨシムラ知事に見せてあげたいわー。
「僕らをバンパクに連れてってリン!」
「ダメです」
ぎゃあああて転げ回るウサ。ロッキーとヨースケくんも後に続く。ここベランダだぞ小動物共。
「万博なんて多分つまんないから。アナタ達絶対退屈するもん」
「しない、しない、退屈しないーッ!」
「今だけね、珍しいモノ好きの奇特な人達が集まってくるの。何するにしても待つよ! 行列」
ピタと転げ回るのを止める駄々っ子の面々。
小動物は待つのが苦手。やるべき事は今やるか、忘れるかの二択しかない生き物だから。
ヒソヒソ会議が始まった。
「……そもそもバンパクって面白いの?」
「我々は踊らされてたのかもしれないウサくん。大阪とバンパクに……」
「テレビでの扱われ方がサ……アレに似てね? ホラ、つまんねー芸人でも客がやたらウケる番組」
「だね、ヨースケくん。雰囲気だけで持って行こうとする感じ……視聴者を舐めてる!」
「僕ら大阪とかバンパクとか……別に何でも良かったんだと思う。だってヒマだから!」
ちっこいのが私の足元に集まってキタ。
「大阪バンパク、意味なし!」
「大阪バンパク、意味なし!」
「大阪バンパク、意味なし!」
マンションベランダから階下に響き渡る小動物達のシュプレヒコール。それを聞いた通行人が一人二人と。
次々に拳を突き上げ始めたの。
「大阪バンパク、意味なし!」
この声は瞬く間に関東一円に広がり、やがて世界中に拡散していった。
皆そう思ってたらしい。
それではまた…




