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大学に行きたがるペットの扱い方

土曜日の20時更新です……

「リン。僕、大学に行きたい」

 

 真っ直ぐに、キラキラした目でウサが訴えてきた。ショートのボブをハーフアップ、エプロン姿の私。

 

「お昼までに帰って来てよー。いってらっしゃい」

 

「え? うん。いってきまーす!」

 

 川向こうにK大学のHキャンパスがある。何かイベントでもやってるのか、ウサが遊びに行った。

 

 三十分程して帰宅。

 

「お帰り。早かったね」

 

「うん。……とりあえず走り回ってきた」

 

 お昼を食べて。これからウサはお昼寝タイムって時に、また。

 

「やっぱ僕、大学に行きたい。リン」

 

「また? しょうがないなぁ。じゃ、いってきな」

 

「う……ん? いってきます」

 

 また三十分程で帰って来る。

 

「お帰り。大学面白かった?」

 

「うん。……広い」

 

 そのままお昼寝。起きるとまた

 

「リン、やっぱり僕大学に行きたいんだ!」

 

「またかー。そんなに大学行きたいの?」

 

「ハイ!」

 

「じゃあ、いってらっしゃい」

 

「うん! いってき……」

 

 ドアの前でピタと止まるウサ。

 

「何か、違う。よくわかんないけど。僕のやりたいコトと違う……」

 

 何やらぶつくさ言ってる。しばらく見てるとフラフラとこっちにやって来た。

 

 さすがに。わかってるよ私にも。

 

 ただ、ややこしい事になると面倒なんで。


 とりあえず走らせてる。あの子の言う事は、だいたい半日で記憶からデリートされるみたいだから。時間稼ぎしてる。

 

「リン、あのね。大学に行かせてください!」

 

 少しニュアンスを変えてきた。

 

「いいよ。いってらっしゃい」

 

 フリーズした。

 

 ちっちゃい脳ミソが限界を迎えたのか。遠くを見つめて、お鼻ヒクヒクさせながら。何か呟いてる。

 

「大学に行き……行き? …………なり……たい」

 

 ヤバ。正解まであと少し。

 

「大学になりたい」

 

 惜しい!

 

 ぷしゆ。

 

 うわ。何か変な音したけど?

 

 その時、奇跡は起きた。力尽きてその場にへたり込んだウサが、ハッキリとこう言ったんだ。

 

「はぁ、はぁ、はふ……大学生にッなりたい……」

 

 脳ミソ使い過ぎて息切れしてますけど。……言われてしまった。なら、アンサーするしかない。

 

「ウサ。高校卒業して、受験に合格しないと大学生にはなれないんだよ」

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

 

 ノーリアクション! 


 普段のウサなら「イヤだ!」「なーりーたーいーッ」とか散々ゴネるのに。まだ何か考えてるよ、この子。だって息遣い荒いもん。

 

「……じゃあ、まず高校生になりたいでふ」

 

 驚いた。最後噛んだけど。

 

「大学生になったら……うぇーい系のサークルに入ってみ……たい…………けふッ」

 

 ヨダレ垂らしながらのブラックアウト。

 

 私はちっちゃな体を抱き締めると、静かに仰向けに寝かせて看病した。すぐに意識を取り戻したウサの頬を何度も撫でながら。

 

「うぇーい系かぁ……」


 少しさみしい気持ちになった。

それではまた……

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