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百点を叩き出すセラピスト

土曜日の20時更新です…

 よく知った香りに誘われて寄り道をしてる。


 街中にあるビルの屋上。その看板の上に立つオレ。『グループホーム おだんご』のデカい文字が並ぶ。


 屋上の周りはフェンスで囲まれていたが。その小太りの男はフェンスに設置されている扉を開けて下を覗き込んでいる。


 火事の時にハシゴ車で避難する為の扉だろう。一見しただけではわからない造りだ。よく見つけたな。


「真下は電線多いからセンズ」


 白うさぎが男の後ろからダルそうに声掛けしている。知った顔だなアイツ。


「そうだよセンズさん! 真っ直ぐ落っこちるのは難しいと思う!」


 茶色いゴリラも続く。ん? ゴリラじゃなくて犬なのかアレ。


 オレは看板の上から景色に目を凝らす。どんよりとした曇り空。良いじゃないか。死ぬには上々のコンディションだ。


 黒のコートからシガレットケースを取り出して一服つけると、また特等席でショーを見下ろす。


「…………ボショボショ……ボショ」


「え? 何だってセンズさん。もっとハッキリと喋んないと……噛むよッ!」


 ゴリラ犬が死人に鞭打つ。あ、まだ死んでないか。


「彼女と上手くやれる自信ないんだってロッキー」


「さすがの地獄耳だ、ウサくん!」


 嬉しそうなうさぎ。


 寒いからロビーに戻りたいねー、とか誘導を試みる小動物コンビ。本心ぽい。


 デブ男の頭ん中からは色んな声が聞こえてくるな。


 幻聴ってヤツか。


「空気のサラリーマンに言っちゃったから……彼女なんかいなくなればいいって…………」


 その時うさぎが突然、上を向いた。どうやらオレに気付いたらしい。コイツはいつも勘が鋭い。


「つかセンズ。そもそもがお前に恋愛ムリ!」


「ウ、ウサくん?」


「恋愛ってのは戦争なんだよ。タフなメンタルが求められるけどお前、メンタル豆腐だもん!」


 うさぎがドヤ顔でこっち見上げてくる。


 何? コイツいつも悪い子アピしてくるんだが。今の正論だろ。デブ男が考え込んでるじゃないか。ヤツの問題点を的確に指摘してる。

 

「恋愛に自信とか必要ないけど? 向いてないお前」


 おいおいゴリラ犬まで考え込んじゃった。


 またドヤ顔キタ。悪口言ってるつもりか? 愛の伝道師みたくなってんゾ。


「……別れた方がいいんスかウサ先生」


 はい、先生キタ。屋上の恋愛相談コーナー。


「死ぬ位だったらなー、楽な生き方選べデブ」


 力無く頷くデブ男。


 静かにフェンス扉を閉めると、丸くなった背中をゴリラ犬にさすられながら施設内に戻って行った。


 ぴょんぴょん飛び跳ねて嬉しそうなうさぎ。


「羊人間さーん!」


「何度言ったらわかるんだうさぎ。オレは黒山羊だ。この角見たらわかるだろ」


「ね、ね。僕、悪い子? 悪い子?」


「残念だがな。お前は表彰される位いい子だ」


 何か泣き叫びながらゴロゴロ転がり回っとる。少し愉快な気分。


「うっ……うぇっ。ぼ、僕悪い子になってぇぇ羊みたいに空飛びたいのにィィィィ!」


 そんなシステムやってないから。


 オレは背中の黒い翼を広げると宙に舞った。


 ぶぅわさささーッ。


「昔、激ヤバの女がオレにこう言った。天使とは苦悩する者の為に戦う者だってな」


 泣きながら前足をふんぶん振ってるうさぎ。


「お前はそっちっぽい」


 イン・ザ・クラウド。

それではまた…

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