ブラッディクリスマス
土曜日の20時更新です…
デリバリー配達員のバイト始めたんラ。
何か自転車乗ってて気持ち良さ気だったし。一度あのヘルメット被ってみたかったラー。まぁ、天音がこのカッコすると登下校中の中坊みたいだけど。おぼこいからヘヘヘ。
注文入らなくてもアチコチぶらぶらしてるラ。別にお金に困ってるワケじゃないし。働いてる雰囲気だけ味わってんの、好き。
だって天音は吸血鬼。時間はたっぶり(四百年位)あるラ。
お、公園めっけ!
そろそろお昼にしよっと。さっき自分用にビッグマッ◯セット買って来たんラ。
「ん?」
見た事ある白いのがいる。人間の男と何かやり合ってるラー。
「……お兄さん動物虐待で訴えます」
「望むところです。ワタシ小動物の虐待を趣味としておりますので」
随分とややこしいヤツ相手にしてんなぁウサ。
オールバックに銀縁メガネの死神みてーな赤ジャージ野郎。アイツは悪人ラ。血の香りでわかるわ。
「お家に持って帰って楽しもうと思ってましたが。ムリそうなので、そこの植え込みにでも連れ込みますか」
ナイフ出してきたラー。アイツ、ガチ犯罪者じゃん。大丈夫かウサ?
「リンに言いつけてやる」
どうやらノーアイデアらしい……仕方ないなー。
天音は自転車から下りると一呼吸で男の真後ろに立ったラ。
『お前はもう二度と動物とは関わらない』
「ワタシはもう二度と動物とは関わりません」
フラフラ公園から出て車に乗って消えたラ。車乗ってたんかアイツ、事故らなきゃいいけど。
「アレー? 吸血鬼の天音だアアア!」
テンション高めでズボンにしがみついてくるウサ。やっぱ怖かったんか。
「人の生き血、吸ってるー?」
「だから外で吸血鬼って言うなお前。お尻の穴引き裂くラ」
「大丈夫だよ天音! 吸血鬼なんてコスられ過ぎて誰も見向きもしないから。今はターボババアがキテます。天音走んの速い? 速い?」
またアニメネタか……毎度毎度天音のアイデンティティを削ってくるラ。吸血鬼、全否定してくっから。
「悪いウサ、今からお昼なんラ」
「うん、じゃ僕も食べる!」
ベンチで天音のビッグマッ◯セット。一番上からパティとハンバーグを取って食っとるラ。ポテト摘みーの、コーラちゅーちゅーって。
「あ……お前! 野菜も食べないと」
「ピクルスめーッ!」
鳩に向かって投げとるラ。うさぎって草食動物じゃないの? フライドポテトは食べるのね。
「美味しいね、天音」
「え、まぁ……うん」
確かに。いつも食べてるのより美味い気するラ。
天音は数百年一人メシ食べてたからかな。解体されたハンバーガーでも確かに美味いラ。
「そだ! 今度ウチでクリスマス会やるから天音もおいでよ」
「クリスマス……」
アレだ、年イチで狂った老人の侵入を許すリスキーなイベント。普段子供に知らない人から物もらっちゃダメとか言ってんのにな、混乱するラ。
「サンタとか。来るラ?」
「サンタなんかいるワケないじゃん天音。プレゼント交換会とケーキ食べたりすんの!」
いないのかサンタ……何だ、いないのかサンタ。
「でもリンがサンタのコスする」
リンて。ウサの飼い主だっけ?
確か若くてキレイな女の子。ウサがいつも自慢してるラ。白い肌、黒髪、長い睫毛、宝石のような瞳、スラリとした肢体…………
「い、行くラ」
「オケ!」
数十年振りに。
吸血鬼としてピクン、てなったラ。
それではまた…




