手繋いだらアウトだと思う
土曜日の20時更新です…
たまに玄関ドアの前に蛾が死んでる事ってあるよね。
ドア開けたらかなりビビる。何でウチに……みたいな。ヨソで成仏してよ〜、て感じの。
ここんトコたまにある。うん、一日置きくらいで。
多い? 多いのか、やっぱ。だよね~! もうトータルで四、五十匹は片付けてるもん八月位から。コレってまさか……イヤ、まさか嫌がらせとかエヘヘ。
ジャリ……
かかったァァァァァァァァァーッ!
玄関前に防犯用の砂利敷き詰めといた。マンションだけどな!
夕方からドア前にスタンバってた私。今、20時半。
「くぉらああぁぁぁあぁぁあああぁぁぁぁッ!」
モコモコピンクの部屋着でドア、ばーん!
そこに居たのは…………
「あ! えーと……いづなのゴンちゃん?」
虹色の毛並みのネコちゃんみたいな、尾っぽの大きな子がイカ耳になって私を見てる。
「怖ッ! リ、リ、リンさんここここわィィ」
「ゴメンゴメンどしたゴンちゃん? あ、蛾……」
いつものよーに亡き骸が丁寧に置いてある。ジロリとカラフルな小動物を見下ろす私。
何故か笑顔で返してくるゴンちゃん。
「こっこっこっこないだーッ、やや優しくしてもらっちゃったから! ヘヘッ」
は?
「じ、じ、自分の大好物ーッ……お裾分け」
ヤバ。今、絶対お乳出た。
抱き締めたいこの子。いわゆる恩返し的な? 母性本能鷲掴みにされちゃったよ可愛すぎて。ハァアアアッ堪らーん!
「あぅ!」
何か背中に……50センチ位後ろから飛んでくる視線。振り返るとウサがジッと見てた。
ガラス玉みたいな目して。
「ウサ、ほらゴンちゃん。虫さん届けてくれた」
「どしたのリン。今日犯人捕まえたらおケツから手、突っ込んで奥歯ガタガタさせたるって」
……冷静なウサは面倒だ。
ここは何とか煙に巻きたいトコなんだけど。
ゴンちゃんが「あ、やってしもた」みたいな顔して俯いてる。やけに察しがいいなこの子…………もしかして私の心、読んでんのか?
こっち向いてコクコクした。そうだ、いづなの能力。
コレを使って連携すれば何とかなるかも!
「ゴン。可哀想だけど今からリンにしばかれます」
目、真ん丸になって私とウサ見比べてるゴンちゃん。
『大丈夫、落ち着いて』
作戦。立てないと。今のウサに「コレ勘違いだった」は通用しない。何故なら私がゴンちゃんにデレてるトコ見られちゃったから。
小動物の嫉妬ほど怖いモノなし!
ゴンちゃんがウンウンてしてる。頭いいねこの子。イヤ何か照れてるし。レス早いわ〜読心術使えると。
ヤベ、ウサがこっちガン見してきた……こーやって敵対すると何考えてんのか、わかんないから怖い。いづなは動物の心読めないし。
「僕はゴンのコト、許してあげたいんだけど」
「えっ? う、うん、そーだね。許してあげよっか!」
「何で?」
誘導尋問してきよったアアアアアアッ!
ウサの標的は私だったんかー! どーする私?
お乳出そうになったからってゲロする? イヤ、でもウサに浮気したって思われたら……そもそもどっからが浮気? いい子いい子したらダメ? それとも思っただけでアウト?
詰んだ? コレ詰んだ私? どうすりゃいいの?
「ゴゴゴゴメ、ゴメンなさいィィ!」
へっ?
「じ、じ、自分、嫌がらせしてたーッ! ヘヘッ」
「ゴ、ゴンちゃん?」
「ひッ、人様に災いもたらす系の! しし仕事してるからッ。プ、プロです。うおぉ〜」
ウソ、つかせてしまった。
こんな優しい子に。
自分の事しか考えてなかったー。飼い主であり、お友達である立場なのにサ。
何やってんだろ私…………
「ウサ聞いて。ゴンちゃん悪くないよ、お礼がしたかっただけ。私の勘違い。後ね、その気持ちが可愛くって。えとォ……お乳出そうになりました」
「そか」
修羅場ってヤツ。初体験の私。
何か気まずゥゥ。
「ゴン。もう遅いから今日は泊まってけば。お泊まり会していい? リン」
「え? ……あぁ、勿論だよウサ。ゴンちゃんもホラ、上がって上がって」
ムッチャ大人じゃーん! ウチの子。
よく出来たダンナ? みたいな。浮気相手と一緒にオヤツ食べたりアニメ観たり相撲取ったり。
相撲でスゴイぶん投げてたけど。
それではまた…




