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30歳のカルテ

土曜日の20時更新です…

 詰所ってトコ素通りした。


 だって僕ら小動物だから。ちっちゃいもん。普通に廊下歩いてるだけで通れた。


「何号室だっけロッキー」


「405」


 少しウンチの匂いする。叫び声みたいなのも聞こえてくるし。病院てこんなだっけ? 開放病棟ってどーゆー意味?


「着いたウサくん。ここだ」


 デカい引き戸を片前足でシャッて開けるロッキー。


 部屋の四隅にはベットがあって。窓際ベットの横、イスに座ったままこっちをジ〜ッて見てくる三十代お腹ポンポコ男。


「センズ〜!」


 声掛けしながらヘコヘコ寄ってく白うさぎ&トイプー。


「センズさん、こんにちは。お見舞いに来ました」


 ノーリアクショーン……


 死んだ魚の目してくるセンズ。手紙書いてたのか? 手、ブルブルだけど。


 いつもの宇宙人みたいなカッコじゃなく病衣ってヤツ着て……何か普通な感じでつまんね。前髪はコンドームで止めてて少し雰囲気出てます。


「今日おだんご(グルホ)行ったらセンズが入院したって里見ィに聞いてサ。ほらコレ、チ◯ルチョコあげる」


 ベットの上によじ登るロッキーと僕。


 センズにチョコ渡そうとしたら、お口あ~んてするから。包装紙むいて口ん中放り込んだ。モグモグ。


 何か面白い。


「ロッキー、僕チョコ買ってくる!」


「公園の鳩にポップコーン投げてる時の目だねウサくん。一旦落ち着こうか」


 お鼻ヒクヒクさせながら周りキョロキョロした。


 病室には一人だけオジサン寝てるけど、あとは誰も居ないね。センズが書いてたメモ用紙覗き込んだらミミズがのたくったみたいな字。誰が読めんのコレ?


「……ボショ…………ボショボショ……」


「は? 何て?」


 何か言ってる。耳をそばだてる僕ら。


「ボショボ……ショボ……………………ボ」


「もっとしっかり喋りたまえぇぇぇッ」


 ロッキーが低く唸る。ビクッ、てセンズ。


「……あ。彼女と…………色々あって……」


「ふーん」


 頭抱えて動かなくなるポンポコ男。


 僕は退屈になってロッキーとベットの上でボヨンボヨンし始めた。ボヨンボヨン、ボヨンボヨン。


 そのうち金玉の蹴り合いっこがスタートする。ボヨンボヨン、ガキッ、ボヨヨン、ガッ、ガシィ、ガキ、ガキン……


 しばらく夢中になる僕達。結果は引き分け。


「うん、いい汗かいた! 次は必ず勝つよウサくん」


「僕がロッキーのタマタマ潰す!」


 金蹴りって楽しい。テンション上がって山の神さまに感謝の踊りを捧げてると


「コレ……」


 センズが震える手でメモ渡してキタ。


「彼女に……」


 え? 彼女って暗号解読のプロか何か?


「人様に気持ち伝えるなら、こんな汚い字じゃダメだセンズさん。集中して書かないとホラ集中!」


 入院患者に激飛ばして書き直させる筋肉犬。今日はテンション高い。


 でも何とか読めるレベルまで持ってきた。


「せっかく頑張って書いたんだからサ。自分で渡せばいんじゃねセンズ」


「だね、ウサくん。今から行こう彼女んトコへ!」


 渋るセンズを病衣のまんま外に連れ出す。詰所で止められなかったんでキャッキャ言いながらタクに乗り込む僕ら。


 年金とか生保とかで意外とお金持ってるセンズ。


 途中コンビニ寄ってコロッケ奢ってもらったりカラオケでアニソン大合唱したりした。


 一応彼女のマンションも行ったけど留守だったからポストにメモ入れて。帰りは公園でバクチクしてから病院に戻りました。


 何だか楽しい一日だったな〜。


 センズは彼女に会えなくてちょっと凹んでたけど。


「じゃねセンズ! あんまクヨクヨすんな。また遊び行こ」


「気合い一番だよセンズさん。今度ジムに連れてってあげよう!」


 ブルブル手振りながら病院玄関に消えてくセンズ。


 後で里見ィに聞いたんだけど。


 離院? とかで警察に捜索願出されてたって。

それではまた…

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