風太はまだ生きてます(イヤ、マジで)
土曜日の20時更新です…
王の威厳が増してきた。そう確信しているよ。
ここのところパン田に向けられる庶民の眼差しに畏敬の光が見てとれる。
動物界の頂点に君臨するパンダだもの。溢れ出すオーラは止めようがないんだ。この世界に生きとし生ける者の宿命として受け入れて欲しい。
お、ウサくん発見。
コンビニの前でモモンガと一緒にコロッケ食べてる。こっち見て直ぐ目線逸らしたね。何かな、おい。
「こんにちはウサくん達。気のせいかもだが。今、パン田をスルーしようとした?」
「やぁ、パン田さん。気のせい……だよ。うん」
いつもはミサイルみたく突っ込んでくる白うさぎが、今日はうつ向いて目すら合わせて来ない。
どーしたのかな。跪きたいんなら止めやしないが。
「ウサ……あんま関わんない方がいいって。コロッケ遠くに投げて拾い食いしてる隙に逃げよーゼ!」
モモンガのヨースケくんが耳打ちしてるね。全部聞こえてるゾ。
「パン田さんあんなんだけど友達だから。僕、逃げないよヨースケ!」
ありがとうウサくん。コロッケは投げてくれないのかな。
「え、えと……パン田さん。最近体調はどう?」
「絶好調さウサくん。覇気が増したと自負してるよ」
「覇気じゃなくて邪気じゃね」
「上手くないから!」ヨースケくんがウサくんに怒られてる。ハハ、小動物達は無邪気だなぁ。
「あのねパン田さん。何かこう、動物に恨まれるよーなコトしなかった?」
「愛され方しか知らない。それがパンダという存在なんだウサくん」
何やら会議を始めた二匹。
「言わないと伝わんない」「気の毒」「ガリガリ」「犯罪者」「バカ」ネガティブな言葉が飛び交う現場。通報していいかな? あ、ポリ公はノンノン。
「……その、パン田さんの後ろ」
ウサくんが指差す。振り向いたけれど誰も居ない。
今、目が合ったのにィ! とか騒いでる。
「パン田さんには見えないみたいだけど……居るんだよ背中に、おんぶしてる」
「何が?」
「半透明のサ、多分…………レッサーパンダ」
レ、レッサー?
「ぜってー怨霊系だよなソレ。だってずっと牙剥いてるしィ」
背中を前足でパタパタしてみる。手応えなし。
「あ、頭パシパシされてるよパン田さん!」
一旦落ち着こうか。今、何が起きてる?
えーっと。背後霊的なモノが背中にくっついていてパン田以外にはソレが見える。
オケ。理解した。
で、ソレはレッサーパンダだと。
……あの、パンダとは似ても似つかないタヌキが?
立ってるだけでキャーキャー言われて勘違いしてる下等生物が、真のパンダ王に取り憑いただとゥゥ!
「何か中指立てられてるよパン田さん」
「敵意丸出しじゃん。余っ程憎まれてんのなアンタ」
ガッデェェェェム!
我が一族の露払い、風太の怨霊か?
「頭の上でオシッコしてる!」
「あいつヤバ! むっちゃ悪いじゃーんギャハハ」
ウサくん達がノリノリで実況報告してくる。
何とかコイツを外さないと……パン田の生活にはデリケートなマインドが必要なんだ。こんなヤツくっつけて逃げ回る(指名手配中)ワケにはいかない。
「パン田さん、困ってる?」
「あ、いいや。余裕かなウサくん」
「110番してくれってプラカード振り回してるよ」
ガッデェェェェェェェェンンム!
エクソシスト! エクソシストを探さないとッ!
「三助に相談してみる? お祓い位なら出来ると思うよアイツ」
「そ、そうだね。じゃあ、お言葉に甘えて」
それから皆でキツネの祠に行って。面倒臭がる三助くんに除霊してもらったんだ。
さすがキツネの一族。ざま見ろレッサーのヤツめ!
「えとなー、レッサーパンダが消える前に言伝頼まれたんやけど」
「悪霊の最後の言葉。聞かせてもらおう三助くん!」
「ウエノ動物園のパンダ、返還されたんで仕方なくコイツにしました……やて」
一斉に下を向く白うさぎとモモンガ。
三助くんがハグしてきた。
リ◯リーとシ◯シンだっけ? 日本にはまだパン田がいます。
それではまた…




