いづな・ザ・ぼっち!
土曜日の20時更新です…
カラフルでカワイイと思った。
虹色の毛並みの……ネコちゃん? 見た目ドラグクィーンのヘアカラーみたくド派手なんだけど。
白Tにショーパンサンダルの地味なカッコの私。
「じ、じ、じ、自分は、ネコじゃないですゥ……ス、ススススイマセン。ヘヘッ」
おかしい。
何ともないんだよ。さっきこの交差点で、私の目の前で、思いっきり車に轢かれてたんだけどこの子。
「大丈夫? 私はリン。怪我……とかしてない?」
「ゴ、ゴ、ゴ、ゴ、ゴンです。いーッ、い、いづなの」
「いづなのゴンちゃん。轢かれてたよね今」
「にゅ……にゅるってしてるから! 任せろ、ヘヘッ」
やたら忙しない感じで、ちょっと不安だったから。とりあえず抱っこして家に連れて帰る事にした。
ウサは遊びに行ってて居ない。
抱っこされてる間棒みたいに硬直してたゴンちゃん。あんま人に慣れてないのかな〜。胴が細いのに尾っぽ太くて変なの。
「何か飲む? それか食べる?」
「めめめめ滅相も御座いません! 人様のおウチにお呼ばれしだだけでもッ、罰、罰が当たるわあああ」
やけに自己肯定感の低い小動物だなぁ。ウサが居たら真似っこ大会開催される絶対。めめめめとかって。
「ゴンちゃんはどこ行くとこだったの?」
お水出したげる。普通にゴクゴク飲むじゃん。
「ぷはーッ! 自分は、え、えとえとえと。お仕事ですヘヘッ」
「エラいねー。何のお仕事?」
「そそ、そんな、アレです。人様に災いもたらす系」
わざ?
「じゅ呪術関係……スススイマセンごめんなさいッ!」
災いってワードで反射的に伊吹山の白イノシシの姿を思い出す私。
「あ、イヤイヤイヤ。じ、自分は神様の使いとかじゃなくって。ごごごご主人様の命を受けてその、フヘッ」
「今、私の心読んだ?」
「ごめんなさいごめんなさい! わーわわわざとじゃないッス。占術とかもやんないとだから……」
コロス。
「怖ッ! リ、リ、リンさん怖ィィ」
「…………やらされてんのか。飼い主さんに」
「おおお仕事なんでッ。生まれてきてスイマセン!」
スマホで検索する。いづな。飯綱。または管狐。飯綱使いって通力を持つ主人に仕えてて占いや呪術の手伝いをする存在。
「飯綱山?」
「ですです! 長野の飯綱山出身ッ」
「人に何の災いをもたらすの?」
「うおぉ〜、そのびょ……病気とか。ダウナー系」
「先祖代々使役されてる?」
「ですです! ごご、ご主人様が山で子を孕んだいづなのトコ来て……よ養子にするからって出産まで餌の世話するんですよーッ! そ、それでオケ。ヘヘッ」
検索によるとその歴史は約八百年前から続いてる。
何時代ですか。スゴいね。私なんかが口はさむ事じゃないとは思うんだけどサ。
飼い主キショ!
「……その毛並みキレイだね」
「え? あ、そんな、あの、そんなコトないス全然」
「自分で染めたの?」
「コ、コ、コレは地毛、地毛なんですスイマセン」
「カワイイね」
「ごめんなさい! ごめんなさい!」
飼い主のヤローめ……
一体どういう扱いを受けたら。こんな仕上がりになるんだっての。
「?」
玄関を凝視したままイカ耳になってるゴンちゃん。
ガチャ。
「だいまーッ! リーン」
あー……ウサが帰って来ちゃった。
「こんにちはー、リンさん!」
脳筋トイプーのロッキーも一緒だ。ズカズカ入ってくる二匹。
「リン、マッチどこ? 公園でセミの抜け殻いっぱい集めたから。一つ一つバクチクで爆破します!」
ウチの子が大切そうにグロいビン見せてくるオエー。
「あ!」
白うさぎが獲物を発見しました。トイプーもピタとフリーズ。
私の後ろに隠れるゴンちゃん。震えてんの?
「どどど動物の心は読めないから怖いぃ……」
ガラス玉みたいな目のウサ。確かに怖ッ。
「コイツ……見た? ロッキー」
「見たよウサくん。猫みたいなイタチみたいなリスみたいな」
「七色の毛……」
ゴンちゃんがパニクって。私のTシャツの中に潜り込もうとしとる。ヤダ、ヤメてよーん。
「カッ」
ウサがゴンちゃんの前足をロック。カッて何?
「……カッケェェェェェェェェーッ!」
「だね、ウサくん。スゴくカッコいい毛並みじゃあないか彼は!」
それから二匹はゴンちゃんを引きずって公園へ遊びに行きました。バクチクショー見せるんだとか何とか。
あの子達、肝心のマッチ持ってくの忘れたから。
様子見も兼ねて公園まで渡しに行く私……アレ? 皆で楽しそうにセミの抜け殻爆破してんですけどー。
ゴンちゃん、術でバクチクに火つけとった。
それではまた…




