小動物的アオハル〜屋上にて〜
土曜日の20時更新です…
「…………暑ゥゥゥゥゥゥッ」
モモンガのヨースケが屋上の手摺の下に寝っ転がりながら呻いてる。
ここは日陰になってるけど、やっぱ暑い。
僕らが働いてるペット福祉サービスのパン屋さん『ほっぺた』が入ってる六階建てビルの屋上。シゴオワにここでダベってから帰んのがいつものルーティン。
「こんな暑いと脳ミソ溶けんじゃね? なぁウサ」
「脳ミソ溶けたらゾンビがちゅーちゅー吸いに来る」
「あ〜、えと。んだソレェェ……」
暑いとツッコミも適当になる。脳ミソ溶けてるヨースケが入道雲を見上げたまんま呟く。
「夢……」
ん。今何て?
「夢。語り合わねーかウサ」
「正気?」
「暑い時にほ熱いモン食べるといいって言うじゃんか。だったら熱い話すればよくね?」
「うん、わかった」
とりあえずやるコトもないからノッてみる。まずはヨースケから。
「俺の夢はムササビ女子と結婚するコトで〜す!」
「え、え、モモンガのミクちゃんは?」
前足でバツした。起き上がってこっち見てくるヨースケ。何期待してんだ脳ミソどろどろのクセに。
「次、ウサな。わかってんな?」
得意そーな顔してコイツ。
「僕の夢はね……」
「夢は?」
「バンド組んで世界デビューするコトです!」
「は? イヤ、違う違う」
「そんで大金持ちになってタワマンの最上階にリンと住んで。そっからヨースケ飛ばします!」
「落ち着けウサ。流れ、大事。もっとリアルな夢語り合う流れだったじゃんか。恋バナ的なさ」
「タワマンの最上階からヨースケ飛ばす!」
「うん、そこも違う。バンド組んで世界デビューから俺を飛ばすにシフトチェンジしてっから。ちなみに俺は飛ぶんじゃなくて滑空ね。死ぬよ、タワマン最上階」
「僕……夢を諦めたくないんだ」
「キラキラした目で訴えてもダメ。ま、バンドで売れるってのがそもそもムリゲーたけど」
「バンド組もーよヨースケ」
「……俺をタワマンから飛ばす為に?」
「イエス」
「ノォォォォォォォォォォンンッ!」
だいぶ元気が出て来たヨースケ。
「バンドやったらモテるよ」
「バンドやろーゼ、ウサ! 俺ボーカルやる!」
「オケ。じゃ僕、足ダン得意だからドラムやる」
「あとは……ベースとギターだっけ?」
「ベースはロッキーがいいかな。ギターはヨースケがやって。ギターボーカルでヨロ」
「え、俺だけムズくね?」
「ヨースケにはバンドのフロントマンとして頑張ってもらいたいんだ。出来そ?」
「出来る!」
「よし、じゃバンドの名前。何にする?」
「クレイジーヨースケバンド!」
「却下。そーゆー感じのバンドいるし。でもクレイジーはいいと思う。もっとモモンガ感出してみて」
「えと……クレイジーモモンガーZ!」
「キャッチーだけどパロディ感強い。こう……さらけ出せないかな自分を」
「う〜ん。クレイジー……クレイジー……」
「クレイジー皮膜びろびろバンド、か。それでオケ!」
「何も言ってねーけど」
「そしたら曲作りね。曲は瀬良じゅりあにやってもらうから。ピアノ習ってるみたいなんで。ヨースケは詩、書いて」
「また俺ェェェェ?」
「たり前じゃん! ヨースケのバンドなんだから。売れてタワマン買って飛ぶんだろがッ!」
「イヤ飛ばねーって……わかった書くよ。やったコトないけど」
「クレイジー皮膜びろびろバンド。絶対、売れよーなヨースケ!」
「おぅ、売れてモテモテだぜェェーッ!」
すっかり元気モリモリになったヨースケ。暑い時には熱い話がいいってホントなんだ。
勢いでそのまま屋上から滑空してった。
久々に見れて僕、大満足。
明日にはお互い何も覚えてない。
それではまた…




