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飼い主が果たすべきプロミス〈前編〉

土曜日の20時更新です…

 人間、いないと思う。


 シマちゃんを王様のように扱う変態人間。お家のどこにもいない。


 いつもいない時シマちゃんはゲージに軟禁されてる。シマリスだから。今日はされてなかったからお家の外に出てみた。


 真夏の大脱走。


「暑ッ」


 鬼暑い外。シマちゃんは部屋に戻ると人間が作ってくれた麦わら帽子を被ってまた外に出た。


 行き先は決まってる。


 川に行ってみたいと思う。


 シマちゃんはまだ川を見たコトがない。たくさんのお水が流れててザリガニっていう両手ハサミの怪物とかがいるトコ。それが川。


 ウサ師匠に川がどこにあんのか聞いてたから。すばしっこいシマちゃんなら直ぐに行けると思う。


 もう着いちゃった。


 シマちゃんの脱走史上初、お家の前にある公園よりも遠くへ来ました。


 堂々と川岸に立つシマちゃん。


 目の前には白黒ボディの小汚い死体がプーカプーカ浮いてる。ガリガリのパンダだと思う。


 小石拾って投げてみた。ポカんてヒット。  


「パンダはお腹が空き過ぎて死んじゃったんだとシマちゃんは思う」


 ザッパァァァァァァッ!


 いい表情で生き返ったパンダ。川、ムッチャ浅い。


「王の行水の時間なんだ。邪魔はしないでくれるかな小動物の君」


「シマちゃんです」


「あ、シマリスの……確かウサくん関係の子だったよね。パン田は次の公務があるからこれで!」


「ザリガニの踊り食いするパンダ。シマちゃんはるばる見に来ました」


「え? あー、イヤ。パン田はもう川に用事ないから。あと食事風景の公開はNGです」


「お巡りさんキタ」


 ザッパァァァァァァーン!


 川に潜ろうとしたんだと思う。浅過ぎてただ浮いてるだけのパンダ。


「郵便の人でした」


 ザザーッ……


 静かに立ち上がってまたいい表情する犯罪者。


「公務に行かないのかとシマちゃんは思う」


「川に呼ばれた気がしてね。別にポリ公がどうとかじゃないんだ。パン田は罪を認知している」


「別の意味で通報されると思う水死体パンダ」


「ポリ公など恐れるに足りず。それが王というものなのだよグッボーイ」


 ドヤ顔のガリパンがズブ濡れで川から上がってキタ。


 一回だけだよ、ってまたでんぐり返し? やろーとしてきたんでシマちゃんは麦わら帽子で顔を覆い隠しました。


 これ見ると何か強制的にパンダ終了になっちゃう!


「え? え? え?」


 気の毒なくらいアタフタする王様。怯え出した。


「この世にパンダのでんぐり返し拒否する生き物なんているゥゥゥ? この子まさかッ……悪魔!」


 とりあえず頬袋から種取り出してカリカリするシマちゃん。


「なッ……何かカリカリ食べてるぅううああああ!」


「シマちゃんの非常食。パンダも食べる?」


 ハッとした感じで正気に戻るパンダ。こーゆー時は日常的なモノに接すると帰って来れるって。シマちゃんはよく知ってる。


「イヤ、取り乱してしまったみたいだ。すまなかったねシマちゃん。世界はちゃんと存在してます」


「こちらこそパンダ。ガリガリだからいつもお腹空いてんのかと思ってた。ムリ言ってゴメンなさい」


 シマちゃんペコリ。


 飼い主さんが心配するといけない、とか言ってお家まで送ってくれたパンダ。直ぐ走って逃げてったけど。


 でもまだ人間はどこにもいない。


 夕方になっても帰って来ない。


 シマちゃんはゲージの中で大人しく人間を待つコトにしました。

それではまた…

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