英國犬と野うさぎ
土曜日の20時更新です…
目の前に広がる茶色の斜面を見上げテ。
溜息ひとつのアタシ。
「揚げ物だとチキン系がマスト。でもFFも捨て難いしコロッケもアリよりのアリだとは思ウ……」
「買うのか買わないのかどっち。小汚いイヌ」
コンビニレジ横のホットスナックを涎垂らして見てたラ。後ろから白ウサギに注意されちゃっタ……ワフッ。
「目から栄養補給してただケ」
「何言ってんだかわかんないノラ公」
さっきからレディに対して容赦ないコイツ。
「アタシはヨークシャーテリアのシェリー。貧乏でも野良犬になったつもりは無いんだけド」
「ヒゲぼーぼーで毛もワシャワシャ」
「コレそーゆースタイルじゃボケ。毛先を遊ばす系」
強がり言ってみタ。もう随分カットもしてないしお風呂も入ってなイ。愛想笑いだけして逃げるように店を出るアタシ。
駐車場の焼けた車止めの上に座ってひと休みネ。おケツ熱ゥ。
「…………ん?」
白ウサギがしれっと車止めブロックの端に座ってコロッケ食べてやがル。カリカリカリカリ。
「趣味……悪いって言われないかウサギ」
「何で?」
不思議と悪意は感じられなイ。余計タチが悪いワ。
「君、女のコからモテないんじゃネ」
「ウサです」
「あ……ハイ。ウサ」
「何で僕モテないの? シェリー」
「え? あ、デリカシーないっしょアンタ」
「デリカシーて何?」
ワフゥ、お腹空いたァァァァ〜。
超絶無神経な小動物の相手するパワーありません今のアタシ。
「デリカシーてヤツがあればモテる?」
「ハイハイ多分」
食い下がってくル。何かこっちジッと見てるシ。
「僕にデリカシー教えて下さい! シェリー師匠」
弟子入りしてキタ。
どーゆー状況コレ? お腹空いてヘロヘロのアタシにモテたいから弟子入り志願テ。
…………オモしれーじゃん、ワフン!
「オケ、ウサ。じゃアタシにコロッケ買って来イ。今、直グ」
「イエッサ師匠!」
ハフハフ、お口ん中ヤケドしながら食べタ。ちゃんとお手拭きも持ってきてくれル。こーゆーのは出来んだコイツ。
「ヨシ、それじゃデリカシーの授業を始めよウ」
「チィス師匠!」
「とりあえずアタシのコト褒めてみテ」
「うーん……………………………………………………」
動かなくなるウサ。何か、黒耳から薄っすら煙みたいなの出てル。そんなムズいお題かコレ。
「何でもいいヨ。顔とかサ」
「あ、目と鼻の大きさ一緒だね!」
「失格」
「目と鼻がボタンみたい。押していい?」
「失格。目と鼻以外デ」
「天パ」
「失格ッ。じゃ普通にワタシ見て思ったコト言っテ」
「チビ。ヒゲ。天パ」
「そこナ。ソレ全部悪口だからお前」
「そーなの?」
「ウサは女のコに気遣いが出来てなイ。そーゆーヤツは絶対にモテないかラ」
またフリーズしてル。
しばらくすると頭掻きむしりながらグリングリン振り回し始めタ。
自分と向き合ってる感は伝わってくるかナ。ビー玉みたいな目しながら何度も頷いてまス。よくわかんないけどガンバレ。ワフゥワフゥ。
がちゃん!
え、何今の音。どっかのスイッチがON?
「……シェリー。僕んちおいで」
ウサが半目になってヨロヨロ近付いて来ル。ホラー映画始まんのか今かラ。
「シャワー浴びてったらええねん」
え、シャワー?
入りてぇぇよぉぉぉぉぉぉぉぉゥ!
「ウ〜ン…………どしよっかなァ」
「シャワーだけやん。シャワーだけやん」
「何でそんなシャワーさせたいウサ?」
ピタと止まる半目ウサギ。
着眼点は良かっタ。相手がして欲しいコト、ちゃんと捉えてるヨ。後はスマートな誘い文句ネ。
NGワードは「小汚い」「野良犬」「天パ」ets。
「そ、そ、そ、それは、シシシシシシェリーが」
落ち着いテ。大丈夫。
「うぅ、ひぐ……シッ、シェッ、シェリーがぁぁぁ」
泣き出しちゃッタ。
「キシャァァ…………………………」
声出てないけど泣いてル。
ガンバレ。
天は諦めないヤツに味方してくれる多分。もうムリって思ってもその先に光はある丿。
掴むんだ前足デ! 目を見開いて捻り出セ!
アタシに伝えるべきデリカシーのある一言。
「シ、シェリーがぁ」
アタシ
「ブルブル」
ブルブル?
「ブルブルってやるトコ。見たいから……」
「合格」
弟子が己のカラをぶち破ってキタ。
もうアタシが教える必要ないかナ……つか、逆に教えられたワ。コイツ意外とモテ男かもネ。
✳✳✳
ウサん家に行ってお風呂入りましタ。
飼い主のリンがシャンプーしてくれた丿。
ずっといい子にしてたんだけど、やっちゃダメって無理な犬だからアタシ。
盛大にブルブルってやっちゃっタ。
めって怒られたワフ。
それではまた…




