ビューティフルワールド2
土曜日の20時更新です…
「よし、行け! イケるッ、今!」
「ココとココ。ココも打てましゅウシャしぇんぱい!」
公園の敷地内にお稲荷さんの信者が勝手に建ててくれた祠。中はワンルームになってて電気も通ってるしWiFiも飛んでる。
ここの主がワシ、キツネの三助。
今日の義手はみたらし団子の串集めたヤツ。
今、ワシの祠でその筋のマニアと達人が一緒になって仲良くタブレット見てます。
「何で打たないんだよーッ? なぁ、とっとこ」
「でしゅね。独学のやり方、間違ってましゅこの子」
アニメ……やんなコレ。高校生が喧嘩を独学するって漫画原作の。ファイトシーン見ながら白うさぎと覆面ハムスター女子が熱く語ってはるけど。ここワシの祠。
「ケンカで脚なんか蹴ってどーすんのサ。金蹴りしないと! なぁ、とっとこ」
「金蹴り、目ちゅぶし、チョーパンのコンボで大抵は終わりましゅからね! しぇんぱい」
アニメなんですけどー。高校生のステゴロシーンなんか放送しませんよー。つか、冷蔵庫から勝手にジュース出すなウサ。コップどこ? じゃねーわ。
「とっとこはどーやって当ててんの? 金蹴り」
「アタチの場合は間合いに入るまでトコトコ歩いて行きましゅね。スーパーで大根買う時みたいに。相手が気付いた時にはもう、グシャッ! でしゅ」
コラコラここで動きの確認すな! うわ、ホンマにいつの間にか懐に入って……じゃねーわ。
この覆面ハムスターの娘、マジで強いからなぁ。前に大蛇絞め落としてんの見たコトあるし。イヤ、何じゃれ合っとんねんお前ら。お股タッチ〜♪ じゃねーわ。
ったく。付き合ってんのか、っちゅー話やん。
……………………え?
「ココ蹴ったらどーなんの? ココ」
「ヤダも〜しぇんぱい。しょこはウンチする穴でしゅって〜。ヤメッ……ヤメてぇぇぇ」
イチャついてるー? 何してくれてんの神聖な祠で。うさぎとハムスターやんなお前ら。
「もしもし? 邪魔して悪いけど。そろそろ帰ってくれへんかな〜。ワシこれからお昼ご飯の支度あるんで」
「僕ハンバーグ!」
「アタチは餃子!」
耳悪いんかこの小動物共。
でもこの覆面怒らすと怖い。
「……冷凍食品でいいスか」
「リンはいつでも冷凍食品です」
「しぇんぱいがオケならオケでしゅ」
ヴィィィィィン……
電子レンジ。凝視しとるけど。
ウサはいっつも飯の時だけは行儀がええねん。覆面と小テーブルの前にお座りして無言。
この静寂がハンバーグと餃子で十分間は続く……怖ッ!
「えと……お前らアレか、付き合ってんのか?」
覆面がオロオロし出した。ウサ無言。
「な、何言ってんしゅか三助しゃん! しょんな……もォ〜ねぇ? しぇしぇんぱい……」
覆面、わかりやすい。
「まぁ同じ哺乳類やし。ワシは種がどーとかそーゆー考えはないから。愛さえあればな!」
「あ、あ、あ、愛でしゅかッ?」
覆面越しでも真っ赤っ赤やん。オモロ。
「覆面ちゃんはアレか。ウサのコトどー思ってんの?」
「え、え、アタチ? アタチはその、えと……えとッ」
神様の神使、大蛇を絞め落とす両前足で顔を覆ってしもーたちっこいの。
野性のS魂に火が点くワシ。
「ただのお友達? それともオスとして興味あんの? 妄想とかしてんの? ウサとお付き合いする妄想とかしてんの?」
草食動物を追い込む。半泣きになってるやーん……た、たまらんわコレッ!
伊吹山の山麗を矢のよーに突っ走ってる爽快感。
「愛してんのかッ? 愛してしもーたんか先輩を?」
あとひと跳躍で獲物のお尻にカブりつける!
集中、集中して……
「僕はとっとこのコト好きだよ三助」
へ?
突然目の前に白うさぎ……あ、ここワシの祠か。
うわ、
ウサお前、何オットコ前なコト言うてんの?
「強いから」
は?
あ、うん。強いもんね……つ、強いから?
乙女心が気になって覆面の方を横目でチラッ。
「ウシャしぇんぱい」
輝いとった。パァァァて。
「チ〜ン!」
何か素敵な空間が出来上りました。
ワシの祠で。
それではまた…




