殺し屋トン平の冒険〜イップス編〜
土曜日の20時更新です…
殺し屋独学。
トン平は毒殺のスペシャリストなんだブー。
でも前にトライした時、白うさぎの手にかかって胃の中に仕込んでた蠱毒ぶち撒けたあげくギブしちゃった。
だからね、勉強してきたんだ新しい殺テク。今スマホアプリで出てるからそーゆーの。トン平もダウンロードして散々やり込んだブー。
ヤツにリベンジする。ただそれだけを目標に、この一ヶ月間でトン平は強くなったブヒ!
「おーい、ブタの赤ちゃァァァん」
公園の出入り口からターゲットの白うさぎが駆けてキタ……え、足速ッ。
「ちゃんとゲポ吐いてるゥ?」
ちゃんと飯食ってる? みたいなノリで。いつの間にか目の前だブー。
あ……えと…………ヤバ。こないだの悪夢が蘇ってきて声出ないし身体も動かない。イップス? コレ、イップスなっちゃったブヒ?
「何ブヒブヒ言ってんのー」
鼻ひこひこさせながら……アゥ、またお腹ペタペタしてくるぅぅ! やめッ、やめろよおぅぅ!
「アレェ? コポーてゲロ吐かないや赤ちゃん。体調悪いのかなぁ? つまんね」
お腹鍛えてきたからこんなんで吐いたりしないもんトン平。つか、もう飽きたの? ソレはソレでこう、何かムカつくブヒ!
「ちっこいブタはこないだ死んだフリしてた」
このタイミングでぶっ込むシマちゃん。
無反応の白うさぎ。少しだけ首を傾けたブー。
「え……まさか覚えてないブヒ?」
頷いたー。
最悪なんですけどコイツ〜! トン平結構傷ついたんだブー、死んだフリしてほっとかれたヤツ〜!
「師匠をぶっコロするとシマちゃんは思う」
連打でぶっ込むシマちゃん。これだと何かほったらかしにされて怒って復讐、みたいだブー。
トン平はね、プロの殺し屋としての矜持を踏みにじ
「ゴメンなさい赤ちゃん」
ペコリて。
普通に謝って来たブヒ!
「ケンカしたらリンにめってされるから。パン田さん、こんちは〜」
シカト……されたブッ。
もうトン平には興味ないのわかる。野良犬の着ぐるみにムッチャ絡んでるブヒ。
イジられる者の恍惚と不安、二つ我あり。
殺し屋は目立っちゃダメだけど。トン平はある程度イジられて相手にスキを作って仕留めるタイプ。完全にシカトされたのは初めてかな。
うん、頭にキタブー。
「新技でぶっコロするブヒ」
場所……えと、場所。
移動しないと。新技は壁のあるトコじゃないと使えないんだブー。ココ、公園。壁なんか無いね。
あの連中仲良くお話してるから声かけづらいブヒ。
トン平シカトされてるしな〜。
でも嫌なコトやんないとプロじゃないし。出来ない言い訳しててもしょうがないし。
「白うさぎに場所変えようって、お願いするブヒ……」
口に出してみた。
何かドキドキする〜!
断られたらどーしよ……声、震えてる?
アレアレアレ? また身体動かないブー。イップス? 本格的なイップスなったコレ?
め、目の前ぐらんぐらんだブゥゥゥゥゥゥ!
ココから逃げないとッ。横になりたい! とりあえずお家帰ってミルク飲んで横になりたいフゴーッ!
……コテンて。
トン平倒れちゃったみたい。
白うさぎがガラス玉みたいな目で覗き込んでキタ。
✳✳✳
気がつくとトン平は動物病院のベットの上に居たんだブー。
キレイに胃洗浄されて……自殺未遂で入院ブヒー。
商売道具、無くなっちゃったしイップス抱えてるしで一先ず引退。
K市には二度と近づかないブヒ。
それではまた…




