表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/229

ウサのお友達、ロクデナシ樽本再び

土曜日の20時更新です……

 元気良く、街中を時速四十キロで突っ走る僕。

 

 樽本から電話来たんだ。こないだ救急車で運ばれたっきり、どーなったのかスッカリ忘れてたけど。


 生きてた。

 

 待ち合わせの喫茶店が見えてくる。アイツお金無いから、いつも公園とかで会ってたのに。「奢る」だって。何か警戒してたみたいだったけど……何だろ?

 

 カラン、カラン、カラ。

 

 ジャンプしてお店のドアを開ける。キョロキョロ。

 

 いた!

 

 金髪髭もじゃ。髪を後ろで束ねてる黒T男が一番奥のテーブルで椅子にもたれ掛かって……。

 

 失神? してるーッ!

 

「樽本~ッ」

  

 僕はヤツの席まですっ飛んでくと、短パンの膝にしがみついて声かけしてやる。いつものルーティンだ!

 

「んぐぅ……はッ、ウサか!」

  

「樽本ォ。また失神してんのかコイツめ~」

 

「おぉ、油断してた。危ね。コーヒー飲んでてリラックスしたんかな……」

 

 ハッとして周りを見回すと安心したみたいに「ここやったら大丈夫」「店員いてるし」とか言ってる。

  

「頭パーンていったのか、樽本ォ」

 

「え? あ、イヤ寝てただけやでウサ。ちゃんと座っとるやろ? な!」

 

 何だか今日の樽本ワールドは控えめだ。調子悪いのかコイツ? 僕は樽本が面白くなるのを待つコトにした。

 

「あ。せや、昨日Dのアニメ映画。地上波初放送でやっとったなー。見たんかウサ?」

 

 違う違う樽本。そんな世間話欲しくない。

 

 僕が待ってんのはアレだよ、ホラ。頭パーンてなるヤツ。見せておくれよ樽本ワールド。全開でサ、来いよ来いよカマーン!


「とにかくな、落ち着けウサ」


 樽本がスパゲッティのナポリタンを注文してくれた。今日は雨、確定だね。とりあえず一口、パク。

 

 ウソだろ……コレ、めっちゃウマイ!

 

 僕は夢中になってちゅるちゅる食べた。


 リンの作ってくれるナポリタンと全ッ然違う。ベッタベタのコッテコテだ! 樽本のコトもスッカリ気にならなくなる程ンマイ。

 

「ふううう。ゴチ、樽本。僕が今まで食ってたナポはナポじゃなかったよ……」

 

 タバコ咥えたまんま失神? してる樽本。

 

「………………」

 

 そう言えばさっき「天井の線、曲がってるやん」「遠近法おかしいやん」とかやんやん騒いでたっけ。ナポに夢中になってシカトしたけど。

 

 耳ヒコヒコさせながら、僕はしばらく黙って見てた。

 

 かふっ、て自力で息を吹き返す樽本。

 

「はぁぷ? あ、また寝てたな……。ウサ、大丈夫やから来んでええぞ。な!」

 

 タバコに火つけてまた白目むく樽本。ぷっ、勝手に寝んなよ。頭パーンなんかコレ?

 

 かふって。またまた自力で帰還。


 今度は動きが超スローになってた。タバコを灰皿に置くまでに一本灰になる位のスピード。

 

 僕はそ~っと席を立って樽本に近づこうとする。

 

 ゆ~っくりと。ヤツの右手が上がってきて。僕の顔の前で止まった。

 

「だ~い~じょ~うぶうううう……」

 

 このやり取りが五~六回続いて。

 

 三十分程でヤツのゆっくりが元に戻った。スローは少し面白かったけど。僕が追い求めてるのとは違う。

 

 僕は頭パーンがやりたいんだ樽本。

 

 守りに入んなよ! 大丈夫とか言うな!

 

 ギリギリの、ヤバいトコで持ちこたえたりこたえなかったり。そんなお前が好きなんだ。

 

 マイヒーローT・A・R・U・M・O・T・O……

 

✳✳✳


 結局、最後まで樽本は頭パーンてならなかった。

 

 家に帰ってリンに一生懸命グチる僕。リンはテレビ見ながら何度も頷いてた。

 

「ったく! 樽本ひよってんじゃねーよ。ヒーローじゃないし。もう、会いたくない」

 

 一回だけ足ダン出た。リンにしがみついて甘える。

 

「頭パーン、頭パーンて!」


 そしたらリン、僕の方に向き直って抱きしめてくれたんだ。


「私がもし頭パーンてなったら。ウサはどうする?」


「泣いちゃうと思う!」


「そか。優しい子」


 頭ナデナデしてもらった。


 僕、優しい子だから許してやる樽本。

それではまた……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ