吸血鬼×献血×アイデンティティ
土曜日の20時更新です…
「吸血鬼がッ……献血のキャッチやってるゥゥゥ?」
黄色のウインドブレーカーに身を包んだ天音。
オーバーリアクションでアピしてくる白いのを見下ろしながら、小声で囁くラ。
「キャッチ違うわアニマルセラピーのウサ。今度人前で吸血鬼て叫んだらお股裂くからな」
駅前広場に献血バス。「献血」のプラカード持った天音は道行く人にお願いしてるんラ。「ご協力下さ〜い」てな。
天音は見た目おぼこいから。JCに間違えたオバちゃんとかが「偉いわね〜」て褒めてくるラ。
じゃなくて献血してくれよう。
「昼間っから血に飢えた吸血鬼見れて僕、感動してる! そこまで困ってたんだ天音」
「天音じゃなくて輸血の必要な人間が、だ。白うさぎ」
イミフとか言って肩すくめとる。
「地下アイドルの次は献血のボランティアに挑戦してるラ」
人生の折り返し地点を迎えて。グループホームを出た天音は残された時間(約四百年)ちゃんと生きようと決めたんラよ。
コイツのセラピーが原因でな。
「だけど吸血鬼が人の為に血ィ集めるって設定ややこしくね? 求められてるのは血に飢えた吸血鬼一択です」
マジ説教キター。設定って言うな。
「イヤ別に天音は血とかいらないし。無くても平気ラ」
「それじゃ吸血鬼キャラの意味ないでしょーがッ!」
鼻ヒクヒクさせて怒ってくるー。仕事の邪魔ラー。
「只でさえ吸血鬼、キャラ弱いんだから。もっと世間に食らいついてけよ天音!」
プロデューサー目線だー。寿命長いんだからいっそエルフで通せとかムリ言ってくるー。
いっつも天音のアイデンティティを脅かしにくるんラこの小動物。でも今回は天音も理論武装してキタ。色々勉強してなーッ。
「多様性の時代。天音は吸血鬼も個性だと考えてるラ。だから……ありのままでいいと思う!」
突然、一口ゲロ吐く白うさぎ。
「うぇ……あ、ゴメンなさい。久々レリゴーのフレーズ聞いたらゲポ出た。帰ってリンに言いつけます」
「ハイ仕事の邪魔なんで帰れ」
ジッ…………として動かないウサ。
イヤ帰るっつったじゃん! 何か流れに納得してない感じラ。
「……献血のご協力お願いしますラー」
フリーズうさぎをシカトして呼び込み再開する天音。
そしたらな
「お願いしゃーす……」
頼んでもないのに。ウサも呼び込み始めたんラ。
「……何のつもりラ」
「このままだとリンに〝めっ〟てされそな気がする……」
「お前は献血をイジったワケじゃないからウサ。コンプラ的には大丈夫ラ帰れ」
シュン……てしながら「いらっしゃせー」て声掛けしとるラ。
人々はどんどん素通りしてく。
助けてって言ってんのにな。
あ…………
ウサが一人引っ張ってキタ。ムッチャ笑顔ラー。
「天音〜、お一人様ご案内イイイイイ!」
コイツ、やるじゃんか。
天音も負けてらんねーラ! ヨシ……ここは一つコンセプト変えてやってみよ。
血に飢えた吸血鬼っぽく。
それではまた…




