ウサ、銀行へ行く
土曜日の20時更新です…
「金利ってヤツが上がってるらしーから。今日は銀行に行こうと思うロッキー!」
ウサくんの覚悟を秘めた眼差し。
仕方なく来たけれど銀行。
あ、警備員の人はケーサツど違うからウサくん。メンチ切っちゃダメ……何かオバさんキタ。丸眼鏡のチリチリ頭。
「いらっしゃいませ。今日はどういったご用件で?」
「金利。会わせて下さい!」
「通帳の開設でよろしいでしょうか?」
通じてるね。素晴らしい仕事っぷりだ丸眼鏡。
「ご予約の方は?」
「ウサです」
イヤ、してないよねウサくん。さっきまで公園で遊んでたじゃないか。オバさん何か確認してるけれど。
「……申し訳ありません。予約してないと口座作れないのよ。そもそも動物さんは作れないの」
「虐待で訴えます。偉い人呼んで」
ギャーッて言いながら床の上転がりまくるウサくん。今度はスーツのオジさんキタ。
「お客様。とりあえず、こちらへどうぞ……」
空いてるブースに通される私達。飴ちゃんを貰って上機嫌のウサくん。
「先程説明があったと思いますが」
「通帳。作りに来ました!」
学習してる……さっきは金利に会いにキタとか言ってたのに。
「大変申し訳ありませんが動物の方は口座の開設、出来ないんです」
ウサくんのガラス玉のよーな目を見て薄毛のおでこから汗が吹き出す小太り男。そう、ウサくんは何も理解する気はない。
「わかった」
わかったんだ!
奇跡が起きて私達は銀行を後にする。駅前商店街を歩きながらウサくんが重い口を開く。
「動物は通帳作れない……」
「だね。ウサくん」
「ロッキーは持ってるよね通帳」
「えっ? あぁ、うん。動画配信の収益とかスマホの支払いとかね、ホラ色々あるから……」
「何で?」
「それはアレだよ……その、動物専門のそういったブローカーからサ。手に入れてます」
「僕も欲しい!」
キタね。
何となくイメージは出来てたんだ、この展開。とばっちり食らうんじゃないかな〜って。
私は用意していた答えを欲しがりうさぎにお見舞いしてやる。
「何に使うのウサくん?」
「え?」
「通帳。何に使うの?」
「え? だって金利さんが……」
「いくら入れるつもりかな?」
「入れるの? えと、何を」
「お金でしょ」
「お、お金? えと……じゅ、十円です!」
「つかないよ金利」
しばらくフリーズするウサくん。
今のやり取りで明らかにスペックオーバー状態だ。黒耳からうっすらと煙、出てきてるからね。
と、その時。
煙が止まったんだ……
「トレカとか推しグッズとかナイフとか。集めてるヤツと同じ気持ちなんだ僕」
「ウ、ウサくん?」
「僕は通帳のコレクターになるよロッキー!」
今日二度目の奇跡、起きた。
ウサくんが新たな着地点に辿り着いた。問題を一切クリアするコトなく。
一周半回って本来とは違う価値観を見出したんだ!
通帳コレクターという道を。
「ウサくん!」
「ロッキー!」
「リンさんに許可、もらってね!」
黒耳がペタ〜て。
ペタ〜て前に垂れる。私のカワイイ友人。
それではまた…




