カラオケでスピッツ
土曜日の20時更新です…
いきなり目の前に白い犬がおった。
口の尖ったフッサフサ毛のヤツ。キツネのワシよりちっちゃい、てか半分位のサイズか。
そんでムッチャきゃんきゃん鳴きよるコイツ……
ここ、カラオケやねんけど。
ウサがオモロがってマイク差し出す。イヤ、きゃんきゃんうっさいわ! エコーかかっとるし。
「ハァ、ハァ、ハァ…………久々にガン鳴きした……」
「じゃ、ポテト追加で!」
違うぞウサ。店員さんやない。
確かにワシら以外で部屋におったら店員かと思うかもやけど。ポテトまだあるやろ。
「ここは……カラオケボックスってヤツか。今何年?」
「一時間延長でいい? 三助」
違うぞウサ。まだ時間あるやろ。まぁ、オモロそうやから敢えて突っ込まへんけど。
「あ、ゴメン。おれはスピッツのポチ。店員じゃないんだ。今って何年かな?」
何年て。そんなコト気にして生きてる小動物おるか。ましてや相手ウサやぞ。答えれるワケないわ。
「確か2549年だったと思う!」
「2549年……今度は570年以上未来に来ちゃったのか…………」
何この会話ー。ちゃんと成立してるやん。ウサが黒耳ひこひこさせとる。
ロックオンされたでポチ。
「おれは1975年の昭和から来たんだ。えと、今までの最高記録が1990年だから……550年以上更新しちゃったコトになる!」
「昭和って何?」
「年号だよ。今は何?」
「確か……葬送だったと思う!」
最近覚えた漢字で答えるウサ。好きなアニメのタイトルな。
「平成から500年も経ってるのに……あんま雰囲気変わんないな」
「平成って何?」
「1990年の時代にタイムリープした時の年号。ちなみにおれ、スゴくショック受けたりするとタイムリープしちゃうんだ。スピッツだから!」
スピッツにそんな機能ないわ。ウサが今の説明理解出来んくてアクビしとるがな。
「……ウサ、タイムリープのコト聞けって」
「え、アレでしょ? アニメとかドラマとかでコスりまくってる設定のヤツ。僕、キョーミない。自分で聞けよう三助」
何か、変な間出来た。
ポチがワシの義手をじっと見とる。
今日はカラオケなんで右前足に〝マイマイク〟付けて来た。何か言いたそーやけど、さっきから目ぇ合わさへんコイツ。ワシがキツネやからビビっとんな〜。
このオモロい状況。ヘタにビビらせて終わってしもーたら勿体ない。慎重に扱わんとな。
「あ、えと……せっかくだから。おれも一曲歌おっかな」
「別にいいけど。何入れんの?」
ウサの鼻が少しヒク、てなった。コイツはアニソンしか歌わん。
「うーんとね。おれの時代に超流行ってるヤツ」
ポチがタブレットに驚くとかの件があって。そのイントロか流れてきた瞬間。
ウサ、爆アガり!
『テテッテ♪ テテッテ♪ テテッテテテテ、テレテレテテッテー♪』
「◯◯◯◯◯Zだアアアアアアアアアアーッ!」
昔のロボットアニメの曲か。やたらゼェーット、ゼェーットうるさい。
ポチが歌い出すとウサもテーブルの上に乗ってノリまくる。しまいには肩組んで「ゼェーット!」て叫んだりして。大盛りあがりやん。
曲が終わって二匹ともハァハァ言うて。「ポチ!」「うさぎ!」てハイタッチしとる。
モニターが点数採点画面に切り替わった。
「えっ……何、何、コレ。聞いてないんですけどー?」
「歌が採点されんだよポチ」
ゆっくり数字が浮き上がってきて……
ろ、60点んんんッ?
え? マジ、こんな点あんの? 思わずザワつくワシとウサ。
甲高い鳴き声だけ残して。
ポチ、どっかに消えてしもーた。
それではまた…




