アライグマのパパ活
土曜日の20時更新です…
「ウサくん。そろそろ帰らないかい?」
久しぶりに川辺りを白うさぎと歩く。陽の当たる所は少し暖かく感じるけれど。この筋肉の鎧は寒さに弱い。
「パトロールも僕らの大切な仕事のうちサ、ロッキー」
パトロール、かぁ。
何かオモシロ案件はないか、目を光らせているだけなんだが。私達は退屈するとこーやって街中を練り歩く。飢えたチワワのようにね。ま、私トイプーだけれど。
「あ。アレ、ジョーじゃね?」
ウサくんが堤防をぴょんぴょん飛び降りてく。
その先には、こちらに背を向けて川で何かやってるアライグマ。ジョーくん……にしちゃちっちゃくないか?
「何やってんのジョー! ヒマだから保健所の壁に落書きしに行こーよー」
「?」
その子は小さなカニを洗っていたんだと思う。私達を見て後ろに隠したから。
「どしたジョー。何か背、縮んだ?」
「子供のアライグマって選択肢はないのかなウサくん。この子はジョーくんじゃないよ」
何だかモジモジしてるチビちゃん。恥ずかしがり屋さんなんだろう。
「ジョーはパパ……オレ、ルキア」
えっ……ジョーくん子供いたの? 名前ルキアって。
「言ってるイミわかんない。ちっこいジョー」
「イヤイヤ、わかるよねウサくん。コレ、ジョー違う」
「子供の頃のジョーじゃないのコレ?」
ウサくんが変なトコでややこしくなってる。
カリカリカリ……
ルキアがカニ食べ出した。辛抱出来なかったんだね。当然ウサくんも食いつく。
「冬眠中のカニ、僕もカリカリしたい!」
羨ましくなったみたい。石とかひっくり返してカニを探し始めた。
カリカリカリカリカリカリカリカリ。
いい音させてカニ食うルキア。たまに川の水で洗ってはまた食べてる。ジョーくんは就労先で作ってるクッキーも習性で洗っちゃうって言ってたっけ。面白い。
「お母さんはどうしてるのかな? ルキア」
「ママはタヌキと出てった。袋の大きいタヌキ。パパがそう言ってたゴリラ」
「おぉっと、ゴリラじゃないゾ〜。私はトイプードル。犬だよ、チワワの仲間」
何か言いたそうにしてる……。トイプーをゴリラと言い切ったんだから何でも言えるだろうに。
「どしたんだい?」
「体とか……触りたい」
私は返事の代わりにポーズを決めてみせた。
ダブルバイセップスのバック。背中の筋肉が歓喜の歌を唄う。犬カフェのお客様からは「天使の羽根!」と掛け声のかかる一品を召し上がれ。
「うわ、カチカチ!」
フフ、夢中じゃないかルキア。ペタペタ触って。
子供の手はちっちゃいからペチペチやると結構……痛、痛いぃ! どんだけ叩くの君ーッ?
「スゴいスゴい! パパ……パパーッ!」
しがみついてくるジョーくんの息子。
「こらこら、私はパパじゃないってぇ。可愛いなぁコイツめ!」
カリカリカリカリ……
ハッとして振り返ると。ガラス玉みたいな目をしてカニ齧ってるウサくん。ジーッとこっち見てる。
「僕もパパ、やりたい!」
ふううう。
どーやら今日のウサくんは真似っこモードのようだ。
悪いけどウサくん、パパの座は渡さない。
私がパパだ!
スパタタタタタタタタタタタタタタタタッ……
堤防の斜面を縦横無尽に駆け回る白い稲妻。そのスピードは時速四十キロを超える。
「カッコよー! パパがここにも!」
ウサくんにしがみつく私の息子。違うゾ、ルキア。パパはこっちだ!
「ふんぬぅぅッ」
渾身のサイドトライセップスで雄らしさ大爆発。
「肩にリンゴ乗せてんのかよパパー!」
負けじと左右の高速ステップで分身するウサくん。
「パパがいっぱい増えたー!」
パワー対スピード。お互い対極の能力で戦うパパ達。負けたら即パパ終了バトル。
これは…………戦争だッ!
ふと、堤防の上から感じた視線。戦いの最中、私は空を仰ぎ見た。
雲一つない真っ青なキャンバスに一匹の獣。
キラ。
その目に光る何か。コイツどこかで見覚えのある……
「あ、ジョーくん?」
泣いてました。
それではまた…




