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ウサの雪やこんこ〜公園ver.〜

土曜日の20時更新です…

 昼間に少しだけ雪降ったから。


 伊吹山の雪嶺を思い出しながら僕とキツネの三助は公園で追いかけっこして遊んでた。


 うさぎは雪見るとテンションMAXになります。


 でも雪、すぐに止んじゃって。「何で僕らこんなはしゃいでた?」とか少しハズくなってたの。


 そしたらサ。


「あぁ……こんにちはぁ……」


 ヨボヨボのおじーさんが三助に声掛けてキタ。


 腰曲って杖ついてる。後ろで小太りのオバちゃんが支えてて。ヘルパーさん?


「あ? 何や」


 三助がちょい強めに反応した。ハズいタイミングだったからね。今日は義手にモーニングスター(中世の殴打武器)付けてるから強気です。


「…………ビビっとんのかぁ」


「あ? 誰が」


「先生は動物の気持ちがわかるんです」


 オバちゃんが言う。先生なんだ。雪の日に施設抜け出した人かと思った。


「触らせてぇ……」


「気安う触んな」


 パシって手を払う三助。


「コラ! 先生に何て事すんの」


「人にぃ……慣れとらん」


 よく見たらこのおじーさん。毛皮のコート着てんじゃん。まさかとは思うけど……キツネ?


「……とりあえずな…………ほ、保護じゃ」


「は?」


「人にぃ……その、アレ。慣れるまでぇ、ウチに来い」


「はあああ?」


「じょ譲渡会でな。里親見つけたるぅ…………」


「はあああああああああああああああああ?」


「先生は譲渡会で里親が見つかるまで面倒を見てやる、とおっしゃってます」


 太ってて分かんなかったけど。オバちゃん、メイド服着てる……メイドさんなんだ! メイドって色んな意味で自由なんだ!


「保健所の回しモンか」


「え〜と、ボランティアでぇ……保護猫の活動しとる」


「ワシ、キツネ」


「保護猫ちゃんにな、里親さんを見つけてやるんじゃ」


「ワシ、キツネ」


「飯食ったかのぉ山田?」


 ボケ老人や!


 メイド山田が「さっき食べたでしょ先生」言うてもーてるやん!


 あ、興奮して関西弁出てしもたテヘ。


 三助も〝あーぁ〟て顔してる。どっかのボケた金持ちじーさんの道楽に巻き込まれた、みたいな。つか、山田教えてやれよう。アレ猫じゃないです獣ですってサ。


 ん? ……山田がどっかからケージ、出してキタ。


「!」


 僕も三助も同時にスイッチ入っちゃった。


 この世の全ての動物はケージ見ると戦闘モード入ります。今からコイツら敵認定ね。


 アホみたいに口開けて甲高く唸る三助。


 僕は必殺ラビキックの体勢に入った。


 死人が出るコレ。三助はともかく僕のラビキック受けたら内臓弾け飛んで死ぬから。こんなおじーさんなら即死だよ!


「……先にホレ、何だ。去勢手術? やっとくかのぉ」


「病院予約入れときます先生」


 病院の「びょ」くらいで三助がダッシュで逃げてく。相変わらず逃げ足ムッチャ早いアイツ。


 でもね、僕逃げない。


 だってこんなヤツら野放しにしとくと他の小動物が餌食になるかもだから。


 コイツらは、ここで僕が退治しときます。


「ラビ、キィィィィィィィィィーック!」


 遠い間合いから一瞬で到達する僕の音速蹴りが、おじーさんのボディに炸裂する!


 ぽむー。


「あ? ……何じゃあコリャ?」


 コイツ、受け止めやがっただとォォォォッ!


「…………猫ちゃん……じゃないわぃ」


 まるで何ゴトもなかったかのよーに。


 公園の外に停めてあった高級車で帰ってくおじーさんとメイド。


 ポツンと取り残された僕。


 これから襲ってくる無力感とどう向き合うか、考えあぐねてると。


「あ」


 また空から白いのがヒラヒラ舞い落ちて来た。


 次から次へヒラヒラ、ヒラヒラ。


 火照った顔に落ちては消える。

それではまた…

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