モモンガの恋愛事情
土曜日の20時更新です…
ずっと探し求めてた。
大空を自由に滑空する時も、お腹パンパンで寝てる時も、ウサや友達連中といる時も…………
「ハフハフ、何泣いてんのヨースケ。火傷した?」
白うさぎ。たこ焼き頬張りながら声掛けてくる。
俺はモモンガだから、たこ焼きのタコだけ食う。今日は元漫画家の里見んちでタコパしてんだけど。ウサと里見がいんのに俺、孤独感じちまってた。
「大丈夫かヨースケ? タコしか食べないのに火傷するんだな。よし、ボクがフーフーしてやる!」
部屋着姿で髪バッサバサの三十男が俺のタコ、フーフーしてくる。
「あ、ズルい里見ィ! 僕もフーフーする!」
ウサも続く。
イヤ、俺が求めてんのはそーゆーんじゃないんだよ……ちょ近、近いってぇ。フーフーやめ……あ、そこはダメ。
「何悶えてんの。タコ中毒か」
「ヨースケは感じやすいんだから。もっと優しくしないと里見ィ」
お前もなウサ。
今、オレが求めてんのはね。愛なんだ。メスの。
デカくて可愛いムササビの彼女が欲しい! そんで抱っこし合ったり、一緒に滑空したりすんの。野郎共とタコパもいいんだけどサ。
「あああああああ愛が欲しいーよーッ!」
「タコじゃなくてか?」
「マッチングアプリでもマッチング出来なくってノイローゼ気味ですヨースケ」
どーでもいいけど。さっきからタコしばりしてくんの何? この漫画家崩れ。つかウサ、黙れ。
「いいかヨースケ。運命の相手はアプリなんかには居ないゾ。自分の身近なとこに居たりするもんさ」
「里見ィの相手は地上には居ない」
「イヤ、ウサ。居るんだ意外と近くに!」
「絶対居ない」
「ウサのよく知ってる人かも……」
「知らないし運命の欠片もない」
何かケンカ始めたんだけどコイツら。でも里見の言ってるコトわかるよ。運命のメスはアプリなんかじゃ見つかんないんだ。
「俺、ムササビの京子ちゃんのコト……忘れらんないかもしんない!」
「元カノか? んーなの向こうはとっくに忘れとるわ」
「リンは里見ィのコト記憶すらしてない」
またケンカしてる。
俺の恋愛相談で合ってますかー? この時間。
「実は今、自分の気持ちに気付いちゃったんだ。俺、京子ちゃんとやり直したいッス!」
あぁ〜……て顔で見てくるウサと里見。
「京子ちゃん好きだよーッ! アイラビューッ!」
ガチャン、て感じで気持ちがロックされた。もう揺るぎませんコレ。
「ね! どーすりゃやり直せると思う俺達?」
たこ焼き食いながら雑に「何で別れたー」とか言ってくる里見。ウサは生地まぜまぜしてる。
何で別れたかって?
わっかんないんだよねー。自然消滅っての? 気付いたら何となく……て感じ。俺も理由、ずっと知りたいって思ってた。
「僕、知ってる。ヨースケがフラれた理由」
えっ。
フラ? フラ? 今なんつったウサ。
「京子ちゃんから聞いたもん」
「モモンガってムササビより飛膜ちっちゃいからダサ、とかだろ。当たりか? ウサ」
里見、それ悪口。泣くよ? 俺。
「ハズレ」
「あ、あのサ〜ウサ。俺ってアレか? イヤまさかとは思うけど……フラれてんの?」
ガラス玉みたいな目で俺のコト見てくるー。
「ヨースケがフラレた理由はぁ〜」
「ちょ、ちょ、ちょ、待てって、待てって! 俺まだフラレたってコト受け入れてないからねー? 心、心の準備がいりますッ」
「わかった! ちっちゃくて小生意気なキャラ生理的にムリ、とかだろ? な?」
「悪態! さっきから俺の悪口しか言ってないからねー里見!」
「突っ込みがウザい」
「手ぇ出るぞーウサ。小動物同士ならワンパン有りだかんなー!」
「……て言ってた…………」
へ?
え、え、ええええええええええええええ。
……誰が?
ウサと里見が眉毛ハの字にしながら寄って来ると。
ぎゅてハグしてくれた。
「ドンマイ。ヨースケ」
何か二度失恋した気分。
それではまた…




